フリーランスや個人事業主と関係の深い税金は少なくありません。
フリーランスが収入を得れば所得税や住民税の課税があります。
会社になれば法人税が関係し、会社設立や不動産の取得では登録免許税などが関係してくるのです。フリーランス/個人事業主が契約を結べば、契約内容によっては印紙税なども関係しますよね。フリーランス/個人事業主を続けるということは、いろいろな税金と関わり続けるということです。
フリーランス/個人事業主と関係の深い税金のひとつに「消費税」があります。
消費税はフリーランス/個人事業主にとって特殊な税金。
なぜなら、フリーランス/個人事業主は「消費税をもらう立場」と「消費税を支払う立場」「消費税を納税する立場」など、複数の立場を持っているからなのです。
所得税などのように一方的に納める立場だけではないため、消費税はフリーランス/個人事業主の税金の中でも特殊な存在になります。
今回の記事はフリーランス/個人事業主が節税の際に知っておきたい税金知識「消費税」について見ていきましょう。
5つのポイントについて分かりやすく解説します。消費税については注目されている新制度もあります。新制度を理解するためにも、基本的なポイントはしっかり頭に入れておきましょう。
消費税とは?
日本人であれば、何かモノを買う時にいつも払っているので馴染み深いものですが、改めて消費税について説明します。
消費税とは「物やサービスの購入、取引などに課される税金」のことです。物を買ったり、サービスを受けたりしたときに、代金に上乗せされるかたちで支払う税金が消費税になります。
大人の場合は家を持てば固定資産税を払い、取得の際は不動産取得税を納めます。サラリーマンの給与やフリーランスの報酬には所得税や住民税の課税がありますよね。しかし、これはあくまで大人の話で、小さな子供には関係ありません。小学校に通う子供は固定資産税や所得税とはほぼ無縁でしょうから、税金を払うのはあくまで大人です。
しかし、消費税の場合は話が別になります。消費税は大人・子供関係なく物やサービスを購入した際に課税されるのです。消費税は子供が最初に触れる税金であると言っても過言ではないかもしれません。
大人か子供かを問わず、レジでお金を払うときに等しく課税される税金。それが消費税になります。
消費税の税率
税率については皆さんご存知かと思いますが、念のため確認しておきましょう。
消費税の税率は「10%」と「8%」です。
基本的な税率は10%になり、一部に対しては軽減税率の8%が適用されます。
以前にテレビで外食の税率が盛んに取り上げられましたよね。現在は食料品などを購入するときは軽減税率の8%が適用され、外食の場合は10%の税率になっています。
消費税の課税対象外
消費税は基本的に物やサービスを購入すると課税されるのですが、中には消費税の適用範囲外の取引があります。適用範囲外の取引においては、消費税はかかりません。消費税の非課税取引は国税庁のホームページにまとめられています。非課税取引には次のようなものがあります。
- 有価証券や支払手段の譲渡
- 利子
- 保険料
- 商品券やプリペイドカードの譲渡
- 住民票や戸籍の手数料
- 火葬や埋葬の費用
- 一定の学校の授業料や入学金 など
消費税とフリーランスの関係
消費税について一般的な消費者目線での解説をしてきましたが、「そんなの知ってるよ!」という方も多いと思います。
しかし、フリーランス/個人事業主にとっては売上・経費に連動して消費税との複雑な関係があります。なぜなら、フリーランス/個人事業主は消費税に対して3つの立場を持っているからです。
- 事業に必要なものを消費者として消費税を払う立場
- 事業者としてモノ・サービスを提供し仕事で消費税を受け取る立場
- 納税者として受け取った消費税を納税する立場
このように、消費税との関係においてフリーランス/個人事業主の立場は極めて複雑です。立場を整理しないと「自分はフリーランスとして消費税とどのようにつき合うべきか」「自分は消費税に関して何か手続きが必要なのか」が分からなくなってしまいます。
フリーランス/個人事業主の消費税に対する3つのスタンスについて整理します。
立場①:【消費者】物やサービスを購入したときに消費税を払う
フリーランス/個人事業主が仕事に関する機器や事務用品などを購入したとします。消費税は品物を購入すると価格に上乗せされるかたちで支払いを求められます。たとえば100円の事務用品を買えば10%の消費税ですから10円ですよね。フリーランス/個人事業主はレジで110円を支払うはずです。
このように、フリーランス/個人事業主は物やサービスを購入したときに消費税を支払うという第一の立場を持っています。業者や店に支払った消費税は、業者や店の方で取りまとめて納税するという流れです。
立場②:【モノ・サービス提供者】仕事で消費税を受け取る
フリーランス/個人事業主のふたつ目の立場が、消費税を受け取る立場です。
たとえばエンジニアの場合ですと、100万円の仕事を請けた場合、消費税10%として10万円を上乗せした金額110万円が売上げとなります。
立場③:【納税者】立場②で受け取った消費税を納税する
フリーランス/個人事業主は仕事の報酬に消費税を上乗せして請求し、その上乗せした分を取りまとめ、納税する必要があります。
しかし注意すべき点が2つあります。
ひとつは立場②で受け取った消費税を全て納税するわけではなく、立場①で事業での仕入れ(経費)として支払った消費税を差し引いた分を納税する必要があるため、経理計算が非常に厄介なものになります。
もし売上が5000万円以下であれば消費税の計算は「簡易課税方式」を利用でき、売上金額にある一定の割合を仕入れのためにお金を利用したと考え簡易的な計算で消費税を算出して納税できることになっています。
もうひとつは、すべてのフリーランス/個人事業主が消費税の納税義務を負うわけではありません。
フリーランス/個人事業主は消費税の納税義務を負う場合と負わない場合があります。条件に当てはまったフリーランス/個人事業主は納税義務を負いますが、条件に当てはまらないフリーランス/個人事業主は消費税の納税義務はなく、消費税をフリーランス/個人事業主が自分のものにできるのです。
- 受け取った消費税は全て納税するのではなく、仕入れ(経費)で支払った消費税を納税する
- 条件によりフリーランス/個人事業主は消費税を納税しなくてもよい人もいる
フリーランス/個人事業主が消費税の納税義務を負う場合
フリーランス/個人事業主は消費税を納税しなければならない場合と、納税せず自分のものにできる場合があります。
フリーランス/個人事業主が消費税の納税義務者になるかどうかは「前々期の売上」が関係しています。
納税義務者になるかどうかの基本的な判断は「前々期の売上が1,000万円を超えているか」です。前々期の売上が1,000万円を超えていれば、その消費税の納税義務者になり、前々期の売上が1,000万円未満であれば、消費税の納税は免除されます。
フリーランス/個人事業主になって(開業して)2年は消費税の納税義務が免除されるのですが、それは開業したての場合は前々期の売上が存在ないため、消費税の納税義務はないと判定されるためです。
たとえば、フリーランスをはじめて4年のAさんがいました。
Aさんの4期目の売上は500万円です。この場合、1,000万円には及びませんから、翌々期である6期目の売上に対する消費税の納税は免除されるわけです。
このように、前々期の売上が消費税納税の基準金額となって納税義務の有無を判断します。
なお、前々期の売上が1,000万円未満でも特定期間(1月1日~6月30日)に売上1,000万円を超えると、翌期は納税義務者になりますので注意してください。売り上げがぎりぎりの場合や消費税納税の有無が分からない場合は税務署や税理士に確認した方が安心です。
消費税は所得税を納めても払うのか
消費税の納税という話を聞くと「所得税も払っているのに?」と思うかもしれません。
たとえばフリーランスAさんが仕事をして報酬を得ると、その報酬に対して所得税がかかりますよね。所得税を払っているのに、さらに消費税も納税しなければならないのか、という話になります。
この点については、消費税の納税義務がある場合は、所得税を払っていても消費税を納めなければいけません。所得税と消費税は別の税金です。消費税と所得税は別物だと解釈して計算や手続きを進める必要があります。
フリーランスの消費税手続き
消費税の納付が必要になる個人事業主/フリーランスは次の流れで消費税の申告手続きを進めます。なお、消費税の申告手続き・納付期限は「その年の翌年3月31日」になります。
まずは消費税の納税義務があるか判断する
すでにお話ししましたが、消費税はすべてのフリーランス/個人事業主に納付義務があるわけではありません。前々期の売上1,000万円というラインがありました。売上などの状況から消費税の納付義務があるか確認しておきましょう。
フリーランス/個人事業主の前々期の売上が1,000万円よりかなり少ない場合などは、判断は比較的容易かもしれません。問題になるのは売上が微妙なラインの場合です。消費税の期限が迫ってから大慌てで税理士に駆けこまずに済むように、早めに判断や対策をしておくようにしましょう。
分からないことがあれば早めに税務署に窓口に相談しておいてもいいですね。
消費税の計算や申告の準備をする
消費税を納付しなければならない場合は計算など申告の準備をしなければいけません。
消費税の申告書類は国税庁のホームページからダウンロードできます。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/shohi/06.htm
消費税の計算方式は2種類あります。2種類の計算方法のうち、基準期間の売上高が5,000万円以下の場合でなければ簡易課税方式は使えません。
消費税の申告手続きをする
消費税の計算や申告書類の準備ができたら手続きをおこないます。
基本的な流れはフリーランス/個人事業主がおこなっている確定申告とほぼ変わりません。ですが、消費税は計算が複雑なので、売上が増えると自分ひとりでこなすのは知識や時間の点で難しくなるかもしれません。経理ソフトの活用や税理士に相談するなど、ミスのないよう進める必要があります。
特に慣れないうちは積極的に税理士などの専門家にアドバイスを受けておいた方が安心です。
新制度「インボイス制度」とは
2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。インボイス制度とは「請求書の記載・項目のルール変更」のことです。インボイス制度は消費税に関するもので、さらにフリーランス・個人事業主にも影響のある新制度になります。
インボイス制度では、今までと請求書のルールが変わってしまいます。ルール変更後の請求書を発行できるのは課税事業者(消費税の納税義務者)として登録を受けたフリーランス/個人事業主です。
ここでフリーランス/個人事業主の消費税について思い出してください。フリーランス/個人事業主は前々期の売上1,000万円がラインになっており、ラインを超えていない場合は消費税を納める義務はありませんでした。消費税を納める義務のないフリーランス/個人事業主は消費税分を自分のものにできましたよね。
しかし、インボイス制度では課税事業者しか新ルールの請求書を発行できないということは・・・消費税を納めなくて良い立場をやめなければならないということです。
インボイス制度はフリーランス/個人事業主に負担がかかるのではないかと反発の声が大きい制度になります。インボイス制度は消費税の重大な問題なので、今後のためにも消費税の基礎と合わせてチェックしておきましょう。
インボイス制度については別記事にまとめましたので参考にしてください。
まとめ
消費税の基本についてお話ししました。
消費税はフリーランス/個人事業主にとって関係の深い税金のひとつです。そして、2021年12月現在、インボイス制度の導入に向かって進んでいることもあり、注目されている税金のひとつでもあります。
インボイス制度はフリーランス/個人事業主によっても重要なルール変更です。消費税の基本的な部分をおさえておくことで制度の理解も進むはずです。