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セルフメディケーション税制とは?フリーランスが使える節税方法

フリーランスの使える控除の中に「セルフメディケーション税制」という制度があります。

今回はその税制を通して節税できる人・節税できる内容・節税する方法をお伝えします!

セルフメディケーション税制は「仕事を休めない」「だからこそ体調不良も自分で対処する」ことの多いフリーランスにはぴったりの控除制度でもあります。知名度は低いですが、使えるなら使わなければ損です。

ここではフリーランスが利用したいセルフメディケーション税制について説明します。

ちなみに税務署に問い合わせたところ「医療費控除を使う人は多いのですが、セルフメディケーション税制を使う人は少ない印象ですね」とのことでした。医療費控除やふるさと納税などと比較すると、圧倒的に知名度の低い制度かもしれません。

セルフメディケーション税制をフリーランスが使う上での基本的なポイントから注意点までしっかり解説します。「意外に使えるかも」と思うフリーランスはいるはずなので、ぜひ注目してください!

この記事で理解できること

  • セルフメディケーション税制の概要を理解できる。
  • セルフメディケーション税制を使って節税できる条件がわかる。

セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制とは、税制の対象になる薬品をドラッグストアなどで購入した場合、購入費用に応じて控除が受けられる制度です。有名な控除である医療費控除の特例にあたる制度になります。

たとえば、あるフリーランスが花粉症に悩んでいたとします。そのフリーランスの花粉症は病院に行くほど重症ではありませんでしたが、花粉の季節になると鼻がむずむずして目も涙で潤んでしまい困っていました。パソコンでフリーランスの仕事をするときに、どうしても「やりにくいな」と感じてしまうからです。

花粉症で悩んでいるフリーランスは、ドラッグストアで花粉症に効果があるアレルギー薬を自分で購入して飲むことにしました。ドラッグストアで購入した薬がセルフメディケーション税制の対象であり、かつ合計で一定額以上の場合は税金控除を受けることが可能です。

また、あるフリーランスは頭痛と肩こり、腕の痛みに悩まされていました。病院を受診することも考えましたが、フリーランスは仕事を休むとその分だけ収入が下がってしまいます。収入を考えると簡単に休むことはできません。そこでこのフリーランスは、ドラッグストアから湿布、痛みを緩和するジェルタイプの塗り薬、目薬、頭痛薬を購入して、どうしても辛いときは自分で買った薬で対処していました。

購入した湿布、塗り薬、目薬、頭痛薬などがセルフメディケーション税制の対象になっていれば、合計金額に応じて税金控除を受けることが可能です。

フリーランスが「体が辛いな」でドラッグストアなどから自分で買った薬品代金が控除として使える。これがセルフメディケーション税制です。

フリーランスがセルフメディケーション税制を使うメリット

セルフメディケーション税制はフリーランスが有効活用したい控除のひとつです。内容的にもフリーランスに合っていると言える理由があります。

セルフメディケーション税制をフリーランスが活用するメリットについてお話しします。

フリーランスは仕事を休めないからこそセルフメディケーション税制がメリットになる

詳しくは「使い方/条件」の見出しでお話しますが、セルフメディケーション税制は医療費控除と併用できません。医療費控除は医療費が多いからこそ使える控除です。

フリーランスの場合、体調を崩したり、病院に行ったりして仕事を休んでしまうと、その分だけ収入に影響します。フリーランスは収入のことを考えてあまり仕事を休みたがらないのではないでしょうか。

医療費控除を使おうにも、フリーランスは「ぜんぜん病院に行かない」というケースは少なくありません。家族がいる場合は家族の医療費が医療費控除の対象になるケースもあります。しかし、単身世帯のフリーランスは年間を通して医療費控除の対象になる支出と縁がないというケースもあるはずです。

医療費控除が使えなくてもドラッグストアなどから対象の薬品を購入していればセルフメディケーション税制が使える可能性があります。

休みたがらない。収入の関係から病院を避けがちである。パソコンを使って仕事をしているときの不調なら、ドラッグストアの湿布などで対処してしまう。そんなフリーランスでも使える制度がセルフメディケーション税制です。

フリーランスは仕事詰めだからこそセルフメディケーション税制のメリットあり

フリーランスは社長・経理・営業・事務を兼ねているようなものですから、仕事の拘束時間が長くなりがちです。

たとえばエンジニアとしてフリーランスをしている場合、取引先と話をするのも自分で、営業をするのも自分、エンジニアとして仕事をするのももちろん自分で、確定申告のために帳簿の整理や領収書の仕分けなどをするのも自分というケースが少なくありません。全部自分だからこそ、朝から晩まで仕事をしているフリーランスや、思うように休みを取れないフリーランスもいますよね。

休みが取れない。朝から晩まで仕事をしている。仕事による拘束時間が長い。だからこそフリーランスの中には頭痛や腕などの痛み、肩こり、疲労、腰痛などに悩まされる人が少なくありません。肩こりや腕の痛み、頭痛などは病院に行くまでもなく、自分で湿布や塗り薬、痛み止めの錠剤などを購入して対処しているフリーランスもいるはずです。

セルフメディケーション税制の内容を考えると、フリーランスと相性が良く、使いやすい控除ではないでしょうか。

セルフメディケーション税制はフリーランスの節税に使える

セルフメディケーション税制は医療費控除が使えない場合にフリーランスの節税に使えます。フリーランスにとって節税は重要な問題です。使える控除は何でも使った方が税金の負担を抑えられます。

セルフメディケーション税制の条件や使い方などについては次の見出しで説明します。

セルフメディケーション税制の使い方/条件

セルフメディケーション税制には利用に際して条件があります。控除の使い方も含めて順番に見ていきましょう。

セルフメディケーション税制による控除

セルフメディケーション税制による控除は税制の対象になる薬品(湿布や錠剤、塗り薬など)を年12,000円以上購入していた場合に使えます(88,000円を超える場合は88,000円)。12,000円を超える金額に応じた控除が受けられるという仕組みです。

セルフメディケーション税制を使う条件

セルフメディケーション税制を使う場合は4つの条件を満たさなければいけません。

  • 医療費控除を使わない
  • セルフメディケーション税制の対象になる薬品を購入する
  • 薬品の購入額が12,000円以上である
  • 健康のための取り組みを行っている

以上の4つの条件があります。条件を満たしていない場合はセルフメディケーション税制による控除を受けられませんので注意してください。

医療費控除を使う場合はセルフメディケーション税制が使えない

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例です。医療費控除を使う場合はセルフメディケーション税制による控除は受けられません。併用はできませんので注意してください。医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらかひとつです。

セルフメディケーション税制の対象になる薬品を購入する

ドラッグストアで薬品を買ったからといって購入代金すべてがセルフメディケーション税制の対象になるわけではありません。セルフメディケーション税制の対象になる薬品の購入代金だけが対象です。

セルフメディケーション税制の対象になる薬品は厚生労働省が一覧にまとめています。ドラッグストアなどでよく目にする薬品が数多く対象になっているのが分かるはずです。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000206165.pdf

また、セルフメディケーション税制の対象になっている薬品はパッケージなどに「税制の対象」という感じで記載があります。ドラッグストアによってはレシートにセルフメディケーション税制の対象である旨、印などがついています。レシートや薬の箱も判断に使えるので活用してください。

税制の対象になる薬品の購入額が年間12,000円以上である

仮に税制の対象になっている薬品であっても、年間総額で12,000円を超えていなければ控除の対象にはなりません。

たとえば1,000円のセルフメディケーション税制対象の薬を1度だけ購入しても、税制の対象金額には届きません。1箱2,500円の薬を年7箱購入すると合計で17,500円ですから、控除の対象になります。

12,000円というと高額な印象があるかもしれません。ですが、頭痛や肩こり、腰痛、花粉症などで定期的にドラッグストアの薬を購入する人は、すぐに超えてしまう金額です。いつも買っている人にとっては「12,000円はすぐ」という印象があるはずです。

フリーランスが健康のための取り組みを行っている

セルフメディケーション税制を利用する上で忘れられない条件として「健康のための取り組みをしていること」が挙げられます。12,000円以上の対象薬品を購入しているだけでなく、取り組みをしてはじめて控除の対象になるわけです。

セルフメディケーション税制の利用条件である健康のための取り組みとは次のようなものを指します。

  • 健康診断
  • ワクチン接種

健康のための取り組みは「個人的にマッサージに通っている」などでは基本的にNGです。健康診断やがん検診などでなければいけません。

セルフメディケーション税制では、インフルエンザのワクチンでも控除対象になります。フリーランスが仕事に穴を出さないためにワクチン接種などをしていれば、控除対象になるということです。

ワクチン接種と健康診断は両方しなければならないわけではなく、どちらか片方で問題ありません。

セルフメディケーション税制の使い方

セルフメディケーション税制で控除を受けるためには、確定申告の際に税制で控除を受ける旨申し出(あるいは記載)しなければいけません。セルフメディケーション税制の条件を満たしていても記入あるいは申し出を忘れていると控除できませんので注意してください。

控除を受ける際はインフルエンザワクチンなどの接種を証明できる書類が必要です。条件を満たしていることを証明しなければならないからです。領収書やレシートから対象の薬品にかかった金額も計算しておきましょう。

セルフメディケーション税制を使う際の注意点

セルフメディケーション税制を利用する際は医療費控除との使い分けに注意が必要です。医療費が発生した年は医療費控除を使い、病院を受診していない年はセルフメディケーション税制を使うなど、フリーランスの生活状況や健康状況に合わせて使い分けることがポイントになります。

また、すでにお話しした通り、セルフメディケーション税制を使うためには4つの条件がある点に注意が必要です。たとえばセルフメディケーション税制を使いたくても年末ぎりぎりの時点で12,000円に満たない場合などは、対象になっている常備薬をひと箱追加で買っておくなど、工夫してみるといいでしょう。

新型コロナのワクチンは対象になるの?

セルフメディケーション税制の条件がワクチン接種または健康診断なので「新型コロナのワクチンはどうなるのか」と思うのではないでしょうか。

2021年は新型コロナの感染防止のためにワクチン接種が進みました。フリーランスの中にも「1回目の接種をした」「2回目まで終わっている」という人は多数いるのではないでしょうか。

ワクチン接種が控除を使う条件なら、新型コロナのワクチン接種でも条件を満たせるかが問題です。

結論から言うと、新型コロナのワクチンで条件は満たせません。対象外になります。

国税庁・厚生労働省に新型コロナのワクチンで条件を満たせるのか問い合わせたところ、2021年10月22日時点での回答では「対象外です」とのことでした。セルフメディケーション税制を使うためには新型コロナワクチン以外のインフルエンザなどのワクチンを接種するか、健康診断を受けるなど、条件を満たす必要があります。

コロナワクチンは現時点では対象外との判断ですが、念のために今後の情報も注視してください。

おわりに|セルフメディケーション税制を有効活用しよう

「よく薬を購入する」「腰痛や肩こりはドラッグストアの薬で対処している」などの場合、セルフメディケーション税制による控除が使える可能性があります。肩こりや頭痛など、不調や体の痛みをドラッグストアの薬などで対処するフリーランスはいないでしょうか。

セルフメディケーション税制はフリーランスが節税方法として使える方法のひとつです。使えそうなフリーランスは、ぜひ利用を検討してみてください。