フリーランス/個人事業主として仕事をする上で無視できない存在が「経費」です。
フリーランスの税金は売上から経費を引いて計算するのが基本なので、経費の額が大きくなればそれだけ税金額が小さくなる傾向にあります。フリーランスの税金では「経費は忘れずに引く」が原則です。
ただ、経費を計上すればその分だけ税金が少なくなるといって、何でも経費にするわけにはいきません。経費には「経費として含めてOKなもの」と「経費として含めてはいけないもの」があるのです。
フリーランスの経費について徹底解説します。
フリーランスの「経費」とは何か
フリーランスの経費とは「仕事に関する支出」です。
たとえばフリーランスの仕事のために200円のペンと100円のメモ帳を購入したとします。ペンとメモ帳は取引先と仕様について相談するために購入し、仕事のためだけに使いました。
200円のペンと100円のメモ帳はフリーランスの仕事がなければ購入しなかったはずです。仕事にまつわる支出ですから、ペンとメモ帳の計300円はフリーランスの経費になります。
このように、仕事にまつわる支出・費用が経費です。
経費にはいろいろな種類があります。
フリーランスの仕事のために公共交通機関を使えば、それは仕事のための支出ですから経費ですよね。自宅で仕事をしているフリーランスの場合は自宅の家賃や電気料なども経費ではないでしょうか。
仕事のために機器を購入した場合や、仕事用の備品を購入した場合なども、「仕事のため」ですから経費に該当する可能性が高いでしょう。フリーランスの仕事にまつわるさまざまな出費、広い範囲の出費が経費になる可能性があるわけです。
ただ、さまざまな出府、広い範囲の出費といわれると「この支出は経費でいいの?」と疑問に思うのではないでしょうか。仕事にまつわる支出・費用が広く経費として認められる可能性があるからこそ、「経費になるのか」の判断は難しいと言えます。
フリーランスの経費になるものを一覧で徹底解説
経費の基本的な考え方は「仕事にまつわる出費」です。よく経費として計上される代表的なものを一覧で説明します。
一覧以外の出費でも仕事に関係があれば経費として認められる可能性がありますので、領収書やレシートなどはこまめに保管しておきましょう。
旅費・交通費
フリーランスが取引先に打ち合わせに行ったときに交通費や宿泊代などは経費として処理できます。
代表的なものとしては公共交通機関を利用した費用や車のガソリン代などです。仕事のための移動で高速道路を利用した場合は、高速道路の料金なども経費にできる可能性があります。
消耗品の購入費用
フリーランスとして仕事をする際に購入した消耗品の費用も経費にできます。
たとえば、仕事のときによくプリンターを使って印刷するとします。プリンターで印刷するためにはインクが必要ですし、印刷に使う紙も必要ですよね。印刷の紙やインクなどはまさに消耗品ではないでしょうか。この他に、仕事で使う文具の購入費なども経費にできます。
消耗品など細々としたものは、自分のための買い物(お昼のお弁当など)と一緒に購入して、うっかりレシートを捨ててしまうケースがあります。
消しゴムやペンなど、些細な物を購入した場合でも、それが仕事に使うものならレシートは捨てないように注意してください。50円の鉛筆でも紙でも、仕事に使うなら立派な経費です。
仕事に使う資料代
書籍や新聞、業界の専門雑誌などの購入費用は経費にできる可能性があります。
仕事の知識や技術について解説した専門書などはまさに仕事関係の書籍ではないでしょうか。仕事にまつわる書籍や、仕事のために使おうとして購入した本などは、経費にできる可能性が高いと考えられます。
ただ、自分の趣味の本は仕事と関係ないため基本的に経費にはできません。余暇に読む漫画などは経費として認めてもらうのは難しいと考えた方が無難です。
接待費・交際費
経費としてよく話題になるのが接待費や交際費ではないでしょうか。仕事に関係するものであれば、接待などの費用についても経費になります。ただし、接待や交際費の計上は注意したいポイントでもあります。
接待費用が多く高額な経費を計上すると税務署から「自分や家族の飲食代ではないですか」「接待という名目で別の費用を計上しているのでは」と疑いの目で見られる可能性があるのです。接待や交際の費用に上限はありませんが、あまりに高額を計上し過ぎると怪しまれるため注意してください。
接待交際費のレシートや領収書については、「何時に誰と」「どのような内容で」などをメモしておくと税務署から物言いがついたときに説明しやすくなります。
地代や家賃、光熱費など
自宅でフリーランスの仕事をしている場合は家賃が経費になります。駐車場を借りている場合の費用なども経費にできる可能性があるのですが、問題は「仕事と私生活の境界線」です。
自宅でフリーランスの仕事をしている場合の家賃や駐車場代は、仕事とは関係ない私生活の分も含まれます。経費として計上する際は仕事分と私生活分の按分が必要です。
同じく私生活と仕事の両方が含まれる経費に電気代などがあります。自宅でフリーランスの仕事をしていると、どこまでが仕事でどこからが私生活の分なのか判断が難しいはずです。
家賃や駐車場などの費用、電気代などの光熱費も経費にできますが、自宅で仕事をしている場合は経費にする割合・金額には注意が必要になります。
通信費やサービスへの支払い
インターネットや電話など通信の費用も経費になります。ただ、光熱費や家賃のところでお話したように、自宅のネット回線で仕事をしている場合は「どこからどこまで仕事なのか」の判断が難しいのが現実です。
ネットや電話などの通信費は「仕事分」「私生活分」と分けて請求されることはありません。通信費などは仕事と私生活で「仕事が6、私生活が4」など按分が必要です。
ネット関係のサービスを仕事で使っていれば、その分の費用も経費にできます。仕事でサーバを契約している場合の利用料などが考えられます。
切手やはがきなどの通信費
切手やはがきの費用も通信費になります。仕事上で使った切手やはがきなどは、もちろん経費です。
年賀状など季節の挨拶はがきも経費になります。
宣伝や広告にかかった費用
フリーランスの仕事や事務所などを宣伝するための費用も経費になります。
たとえばフリーランスとしての名刺を作成したとします。名刺は仕事で使うものですから、業者に発注した名刺代などは経費です。また、宣伝のためにチラシやホームページなどを業者に依頼して作成した場合なども、費用は経費になります。
この他に、フリーランスの仕事の既得意や取引先の送る季節の挨拶状なども経費として落とせます。
「年末に年賀状を業者に発注して印刷してもらいました」「夏には暑中見舞いを印刷しています」
このように、季節の挨拶状などを業者に発注した場合は、その費用を経費にできるのです。
なお、年賀状などは自分で作成・印刷するフリーランスも少なくありません。この場合も、使用したインク代などは経費にできます(勘定科目は別になるので注意)。
支払い時の手数料
仕事の関するサービス費用の支払いや、仕事にまつわる品物の購入費用の支払いのとき、手数料が発生することがあります。
たとえば代金を銀行振り込みで支払うときなどは、支払い手数料が発生するのではないでしょうか。
フリーランスの仕事関係で費用の支払いが発生し、その費用の支払いに手数料が必要な場合は、基本的に手数料も経費になります。
給料賃金
フリーランスの仕事で従業員を雇っていると、従業員への給料が経費になります。フリーランスは従業員を雇っていないケースも少なくないため、従業員がいない場合は発生しない費用です。
税金(租税公課)
フリーランスが支払う一定の税金は経費として計上可能です。
個人事業税や固定資産税、不動産取得税、印紙税、登録免許税、自動車税などは、経費にできる可能性のある税金です。
なお、一部の税金については光熱費や家賃などと同様に私生活と仕事の按分が必要になります。
自宅で仕事をしている場合の固定資産税などは経費にできますが、私生活の拠点が自宅である以上、全額を経費にすることは難しいと考えられます。自動車税なども同様です。
地域や資格の諸会費
資格や地域に支払う会費も経費にできます。
たとえば、フリーランスが事務所を構えている地域の町内会には決まった自治会費を納めるルールがあったとします。事務所が地域内にある以上、会費を納めなければいけません。仕事に関する出費ですから、支払った自治会費は基本的に経費という扱いになります。
また、そのフリーランスは資格を使って仕事をしていました。資格の団体に所属していたため、毎年決まった年会費を納めなければいけません。フリーランスが資格団体に納める年会費なども経費として認められています。
減価償却できる機器など
減価償却できるパソコンや車など高額の物も経費にできます。ただ、パソコンや車などの減価償却できるものについては経費の考え方に特徴があるのです。一気に経費にするのではなく、毎年少しずつ経費にする(減価償却する)方法が使われます。
フリーランスの経費についての注意点
フリーランスの経費については注意したいポイントが3つあります。
フリーランスの経費は証拠を残しておく
フリーランスの仕事に関する支出があったら、必ずレシートや領収書を保存しておきましょう。領収書などを出してくれないお店がある場合は「領収書ください」とフリーランスの方からお願いするといいでしょう。
領収書やレシートは経費の証拠になるものです。仕事に関する出費があってもレシートや領収書などの証拠がないと「その出費は本当にあったのか」と疑われてしまうかもしれません。経費の額が多いと「水増ししているのではないか」と税務署に勘繰られる可能性もあります。経費については「何を経費に計上できるか」だけでなく、領収書やレシートなど、金額が分かるものをしっかり保存しておきましょう。
なお、どうしても領収書やレシートを保存できなかった場合や紛失してしまった場合でも、経費として一切計上できないというわけではありません。
紛失やレシートなどの保存が難しかった場合は日付や時間、店、出費金額などのメモを取るなど、経費として認めてもらえるよう証拠を残しておくようにしましょう。
経費については説明できるようにしておく
経費については説明できるようにしておくことが重要です。
たとえば経費について税務署から「金額の内訳はどうなっていますか」と質問されたとします。
接待・交際などの費用の場合「お店に飲みに行ったときの費用で・・・」と説明すると、「それは仕事に関係ありますか?」とさらに追及される可能性があるわけです。ここで「いえ、これは取引先Aと仕事の話のために飲食店に足を運んだときの支出ですから経費です」と説明できれば、税務署も「それなら仕方ありませんね」と引き下がってくれるかもしれません。
経費の領収書やレシートには「いつ」「どこで」「誰と」「何をした」など、支出に関係するメモを残しておくことをおすすめします。接待費や交際費など、追及されやすい項目については、特に詳細に記載しておくよう心がければ、いざというときに役に立つはずです。
経費にできるか分からない場合は税理士に確認する
経費にできるか分からない費用の場合は「とりあえず経費に入れよう」ではなく、専門家である税理士に確認した方が安心です。
税務署とのやり取りの中で経費に入れてはいけなかったなどが発覚した場合、「このフリーランスは要注意人物だな」「他にも経費に入れてはいけない支出を入れているかもしれないぞ」という印象を与えてしまいます。
せっかく税理士という専門家がいるのですから、分からないことは質問して明確にしておいた方が安心して税金の手続きを進められるはずです。
あやふやなことがあれば自分で適当に判断するのではなく税理士に確認する。
重要な注意点です。
おわりに|フリーランスの税金では「経費」は重要
経費はフリーランスの税金を考える上で重要な存在です。経費をしっかり計算に含めれば、その分だけ税金負担を抑えられます。経費の漏れがあると、本来は引ける分の金額を引いていないわけですから、その分だけ税金の負担が増す可能性があります。
経費の漏れをなくすためには、経費に含められる支出は何かおさえておくことが重要です。その上で、経費について分からないことがあれば、税理士など専門家にも確認しておきましょう。