ここではワンストップ納税とは何か、フリーランスがふるさと納税を使うときワンストップ納税は使うべきなのかを解説していきますね!
ワンストップ特例も税金上のルール・手続きのひとつになります。
名前や意味を知らないと、これから節税をはじめようと考えているフリーランスや、フリーランスなり立ての人は「またややこしい制度が出てきたぞ」「ふるさと納税について調べているのに、違う制度の名前が出てきた」となってしまいます。せっかくふるさと納税をやってみようと思っても、難しい名前や制度が出てくると「来年でいいや」となってしまいますよね。
そこで今回は、フリーランス/個人事業主がふるさと納税で「何これ?」となりやすいワンストップ特例について説明します。
ふるさと納税で詰まったときや、これからふるさと納税をはじめるときの手引きとして活用してください。
ふるさと納税の「ワンストップ特例」とは?
ふるさと納税のワンストップ特例とは「ふるさと納税を使ったときに手続きの一部を自治体側がやってくれる特例」です。これだけでは意味が分からないので、具体例で説明したいと思います。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は自分の好きな自治体に寄付をして「税金の控除」と「返礼品」を受けられる制度です。寄付をした額に応じて税金負担を軽減し、かつ返礼品を受け取れますので、「控除+返礼品」で普通に税金を払うより金額換算でお得になるのがふるさと納税になります。フリーランス/個人事業主も利用できる制度です。
ふるさと納税については別の記事にまとめています。ふるさと納税の具体的な仕組みや、返礼品と合わせた場合どれくらいお得になるかも説明していますので、別記事も参考にしてください。
ふるさと納税の手続き
ふるさと納税をするときの手続きの流れは次の通りです。ふるさと納税の手続きの流れはワンストップ特例を理解する上で重要です。
- 寄付したい自治体を探す
- 自治体に寄付をしたい旨伝える(寄付の手続き)
- 自治体に寄付をする
- 返礼品と寄付金受領証明書を受け取る
- 確定申告をする
以上がふるさと納税の一連の流れになります。
ふるさと納税は寄付金控除の仲間です。自治体に寄付をすると自動的に返礼品などは送られてくるのですが、控除を受けるためには確定申告をしなければいけません。返礼品や寄付金受領証明書を受け取ってそのまま何もしないでいると、税金の控除は受けられないため注意してください。
税務署は個人が控除を使えるかどうかまではチェックしていません。仮に医療費控除や寄付金控除、住宅ローン控除などが使える場合は自分から確定申告をして「控除が使える」「控除を使いたい」とアピールしなければならないのです。ふるさと納税は寄付金控除の中まで控除制度の一種ですから、税金の控除を受けるためには確定申告が必須になります。
ただし、ある特例を使うことにより、確定申告という手間を無しにできるのです。
ここで登場するのがワンストップ特例になります。
ワンストップ特例は確定申告を無し(手続き不要)にできる特例
ワンストップ特例はふるさと納税の手続きの流れ(前の見出し参照)に登場する特別な手続きです。
ふるさと納税の手続きをするとき寄付先の自治体に「ワンストップ特例を使いたいです」と伝えておけば、面倒な確定申告をしなくて済むのです。
本来であれば確定申告をして、寄付した本人(控除を使う本人)が税務署に報告しなければならないのですが、ワンストップ特例を使うことで自治体が代わりに税務署に伝えてくれるため、確定申告が不要になるわけです。よって、ふるさと納税の手続きの「5」に該当する確定申告がなくなります。確定申告がいらなくなると、ふるさと納税をする側は便利ですよね。
ワンストップ特例のもっと詳しい内容については後の見出しで解説します。ここでは、ワンストップ特例について「ふるさと納税の確定申告を不要にできる特例(手続き)」と覚えてください。
ワンストップ特例自体は節税方法ではない
フリーランス/個人事業主がふるさと納税を調べていると、ふるさと納税の確定申告カット制度であるワンストップ特例がほぼ確実目に入るはずです。フリーランスや個人事業主は「特例」とついていることから、ワンストップ特例を節税制度の一貫だと勘違いしがちです。
よく勘違いされますが、ワンストップ特例自体には節税効果はありません。ワンストップ特例はあくまでふるさと納税の付属品的な制度です。すでにお話しした通り、ワンストップ特例を使うことで確定申告が不要になるだけで、ワンストップ特例自体で節税できるわけではありません。また、ワンストップ特例をふるさと納税と切り離して使うこともできませんので、注意してください。
ワンストップ特例は節税効果のある特例ではない。あくまでふるさと納税の確定申告をカットできるだけ。
ワンストップ特例をふるさと納税と切り離して単品で使うことはできない。
ふるさと納税を使おうと思っているフリーランス/個人事業主は以上の2点を確認してください。
ワンストップ特例の内容・手続き・利用条件
ワンストップ特例の条件や手続きについて詳しく説明します。
ワンストップ特例は利用条件を満たしていないと使えません。利用条件を満たしていない場合、あるいは利用条件を満たせない場合は、ふるさと納税の基本的な手順に従って確定申告をしなければならないのです。
ワンストップ特例を使うときの手続き
ワンストップ特例は寄付先の自治体が税務署に「Aさんからふるさと納税の寄付がありました」と伝えてくれますので(このようなニュアンスで捉えておけばOKです)、ふるさと納税をしたときの確定申告が不要になります。
ただ、ワンストップ特例を希望する旨の手続きをしておかないと、ワンストップ特例は使えません。ワンストップ特例の手続きを忘れていた場合や、手続きミスがあってワンストップ特例の対象にならない場合、そもそもワンストップ特例が使えない場合などは、通常通り確定申告をしなければいけません。
なぜこのような仕組みになっているかというと、ワンストップ特例を使える人の中でも「使いたくない」という人がいるからです。たとえば、サラリーマンであるAさんはワンストップ特例を使えましたが、初年度の住宅ローン控除と重なっていたため、ワンストップ特例を使いませんでした。
なぜだか分かりますか?
実は、初年度の住宅ローン控除は確定申告が必須なのです。
ふるさと納税でワンストップ特例を使っても、けっきょく住宅ローン控除のために確定申告へ足を運ばなくてはいけません。そのため、ワンストップ特例を使っても使わなくても同じ=使えない ことになります。
このように、ワンストップ特例を使える人でも他の事情で特例を使いたくない場合があるため、ワンストップ特例を使うかどうかは寄付者の判断任せです。もちろん、ワンストップ特例を使えるケースでも「確定申告が好きだから使わない」というのもありです(まずいないと思いますが)。
ワンストップ特例の手続きは申し込みサイト・自治体によって違う
ワンストップ特例の手続きは「どこの自治体にふるさと納税をするか」「どこのサイトでふるさと納税の手続きをするか」によって違っています。
たとえば、Aといういろいろな自治体のふるさと納税を扱っているサイトから寄付の申し込みをするとします。サイトAではふるさと納税の申し込みをするときに、申し込みにフォームにワンストップ特例のチェック欄がありました。
このようなケースではワンストップ特例のチェック欄にチェックをしてふるさと納税を申し込むことになります。そのうえで必要な書類を自治体に提出するという流れです。ワンストップ特例の書類(申請書)はふるさと納税サイトや自治体ホームページなどからダウンロードできる他、郵送などで受け取れる場合もあります。自治体やサイトによって異なりますので、分からないときは寄付先の自治体に確認を取るといいでしょう。
ワンストップ特例を使うときの基本的な流れは、申し込み→書類(申請書)の提出です。細かなポイントや注意事項などは自治体やサイトによって違いますが、手続きの基本的な流れは同じになっています。
ワンストップ特例の利用条件
ワンストップ特例は利用条件に当てはまっていなければ使えません。ワンストップ特例の利用条件は次の通りです。
もともと確定申告をする必要がなかった
世の中には確定申告を要する人と確定申告をしなくていい人がいます。
確定申告をしなければならない人、しなくてもよい人は国税庁のホームページにまとめられています。
簡単に説明すると・・・確定申告をしなくていいのは、サラリーマンなどです。対して、給与の収入が2,000万円を超えている(高額所得者)などは、確定申告をしなければいけません。医療費控除など各種の控除を使う場合は、確定申告は必須とはいえませんが、控除の利用を希望する場合は手続きを要します。つまり、恩恵を受けたければ確定申告しろ、ということです。
サラリーマンなどの元から確定申告をしなくていい人は、ワンストップ特例を利用可能です。
確定申告をもともとしなくていい人がふるさと納税をしてしまうと確定申告が必要になるため「面倒」「税務署に足を運ぶ時間と交通費でプラマイゼロ」みたいになるかもしれないですよね。これは、ふるさと納税などの制度を積極的に利用してもらいたい政府や自治体にとってマイナスです。
そのため、元から確定申告をしなくてサラリーマンなどについては、ワンストップ特例の利用でふるさと納税の確定申告を不要にできる仕組みになっています。
元から確定申告を要する人に関しては、ワンストップ特例でふるさと納税分だけ確定申告を不要にしても、控除や収入の報告で確定申告をしなければいけませんよね。ですから、ふるさと納税のワンストップ特例は使えないのです。
1年間のふるさと納税先の自治体が5自治体以内である
たくさんの自治体に寄付をしてワンストップ特例を使うと、税務署の処理が煩雑になってしまいますよね。そのため、寄付先の自治体が5つ以内に納まらない場合はワンストップ特例が使えません。煩雑なので従来のルール通り確定申告をしてくださいということです。
たとえば、ある人がABCDEの自治体にそれぞれ5万円寄付しました。寄付者がサラリーマンでふるさと納税以外の理由で確定申告が不要なタイプなら、自治体数も5つ以内ですから、ワンストップ特例が使えます。A自治体に5万円寄付しても、もちろん自治体の数は5自治体以内ですから、ワンストップ特例を利用可能です。
問題は、1つの自治体に何度も寄付した場合です。たとえば、ABC自治体にそれぞれ1回ずつ1万円を寄付し、D自治体に5,000円ずつ1年の内3回寄付していたらどうでしょう。ABCDDDですから、5自治体を超えるという判断になるのでしょうか。それとも、ABCDの4自治体と数えればいいのでしょうか。
このような場合は、自治体数は4と数えます。同じ自治体に何度寄付をしても、自治体の数は1つです。
ふるさと納税時にワンストップ特例の手続きをしている
ワンストップ特例をする際は寄付先の自治体に制度を利用する旨を申し出なければいけません。その上で手続き書類を提出する必要があります。ワンストップ特例が使えても手続きを忘れると使えません。
なお、ワンストップ特例の手続きは自治体ごとにしなければいけません。たとえばABCDの自治体に寄付をする場合は、A自治体にワンストップ特例の申請手続きをするだけでは足りず、他のBCD自治体にもしなければならないのです。
ワンストップ特例はフリーランスもできるのか
ワンストップ特例はフリーランス/個人事業主は利用できるかが問題です。仮に使えるとすれば、ふるさと納税をすれば確定申告をしなくて良いことになります。このあたりはどうなっているのでしょう。
結論から言うと、フリーランス/個人事業主はワンストップ特例が使えません。なぜなら、個人事業主やフリーランスは仕事の収支について確定申告をしなければならないからです。
ふるさと納税先の自治体にワンストップ特例を申し込んでも、自治体で把握しているのはふるさと納税の事実や金額だけです。フリーランス/個人事業主の収支状況を知っているわけではありません。
ふるさと納税をしても仕事上の収支を確定申告しなければいけませんから、フリーランスや個人事業主などのサラリーマン(給与所得者)でない者は、ワンストップ特例が使えないというわけです。フリーランスや個人事業主がふるさと納税をした場合は、ふるさと納税の寄付金受領証明書を添えて確定申告します。
なお、年内までサラリーマンとして勤めて、年明けにフリーランスとして起業する場合などはワンストップ特例が使える可能性があります。
たとえばサラリーマンとして働きながら来年のフリーランスの仕事準備・資金調達などをしている、いわゆる起業準備段階においては、状況により使える可能性があるため、税務署に確認を取ってください。
まとめ
ワンストップ特例という名前から「独立した制度だろうか」「節税制度だろうか」と誤解されがちです。
ワンストップ特例とは、ふるさと納税の付属的な制度になります。ふるさと納税の確定申告をカットする(無しにする)制度です。ただ、元から確定申告が不要だったタイプの人しか利用できないため、仕事の収支を確定申告で報告しなければならないフリーランス/個人事業主は利用できません。
ワンストップ特例自体に節税効果はありませんので、ふるさと納税の際は注意してください。内容を知って正しく利用しましょう。