経費だけではなく、控除の仕組みを使えばもっと節税できるかもしれません。
税金には「控除」という仕組みがあります。
控除を忘れずに使うことはフリーランスにとって重要です。控除を忘れずに使うことがフリーランスの節税の鍵になります。
ただ、税金のルールは複雑で、用語も難しいものが少なくありません。控除が節税につながると言われても「難しそう」という苦手意識を持ってしまうことがあります。また、控除にはいろいろな種類があるため、名前や意味、制度内容を混同するケースもあるのです
この記事では、フリーランスの節税の鍵になる控除の基礎知識を徹底解説します。
節税のために必要な控除の基礎知識は早めに理解しておきましょう。控除とは何かという基本的なところから順番に説明します。
フリーランスが知っておきたい「税金の控除」とは?
控除とは「金額を引くこと」です。たとえばAという制度で「30万円控除できる」と書かれていたとします。この文章の意味は「30万円引けますよ」ということです。控除と書かれると複雑そうに見えますが、言葉の意味としては特に難しいことはありません。
ただ、制度によって控除できる金額は違っており、何(どの金額)から控除できるかが違っています。言葉自体は特に複雑なことはないのですが、個別の控除制度自体は内容を混同しやすく、ルールが難しく感じられることも少なくありません。
控除を理解するポイントは、税金の控除について書かれているところで「何(どの金額)からいくら控除できるのか」をすかさず確認することです。ルールの記載自体は難しくでも、この点に着目すれば使おうとしている控除制度の大枠部分は理解できます。どの金額からいくら控除できるか分かれば、控除制度の大枠自体は理解できます。
しかし、控除には利用に際して条件が定められていますので、大枠を理解した後は条件を確認する必要があるのです。条件は細かな記載が少なくありませんし、国税庁のホームページなどだけでは分からないことも少なくありません。記載のない事項や意味の解釈に迷うときは、専門家に尋ねる癖をつけておくといいでしょう。
控除には「所得控除」と「税額控除」がある
控除には大きく分けてふたつのタイプがあります。ひとつは所得控除というタイプで、もうひとつは税額控除というタイプです。
所得控除とは税金計算に使う所得から一定額を引けるタイプの控除になります。たとえば、フリーランスの収入が500万円で、必要経費を引いたら残りが200万円だったとします。この200万円(所得)から一定額を引けるのが所得控除です。
もうひとつの税額控除とは、所得などを使って算出した税金額から一定額を引けるタイプの控除になります。先ほどのフリーランスは所得控除の他に税額控除も使えました。200万円(所得)から所得控除分を引いて、税率を使って税金額を算出します。この算出した税金額から一定額を引けるのが税金控除です。
所得控除と税金控除では何(どの金額)から控除できるかが違っています。自分で税金を試算するときに所得控除と税額控除を勘違いすると計算結果が違ったものになってしまいます。注意してください。
フリーランスが知っておきたい控除一覧
ここからはフリーランスが知っておきたい控除についてお話しします。控除にはたくさんの種類がありますので、フリーランスと関連性の高いものを挙げていきます。
控除の一覧は次の通りです。
- 基礎控除
- 青色申告特別控除
- 配偶者控除
- 扶養控除
- 保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 医療費控除
- 寄付金控除
- 配当控除
- 住宅ローン控除
- 雑損控除
- その他の控除
なお、ここに挙げた控除がすべてではありません。他にも控除はあります。マイナーな控除については「フリーランスが控除で節税するときの注意点」のところで簡単に触れます。
基礎控除
基礎控除はフリーランスに限らず誰でも使える基本的な控除です。所得に応じて0~48万円の控除が受けられます。基礎控除は2,400万円までの所得者は48万円の控除となり、2,400万円をラインとして控除額が減る仕組みです。
青色申告特別控除
フリーランスの確定申告方式で青色申告を選んでいた場合に使える控除が青色申告特別控除になります。
青色申告特別控除では55万円(65万円)の控除を受けられますが、事前に青色申告の申請書を提出しておかなければいけません。
青色申告の特徴やメリットなどは別記事にまとめています。参考にしてください。
配偶者控除
一定の所得金額にある配偶者がいる場合に使える控除です。
配偶者がいる場合は夫婦で支え合い、養い合わなければいけません。そのため、配偶者控除を設けて税負担を軽くしているわけです。フリーランスに配偶者がいる場合で、その配偶者が条件に当てはまっていれば配偶者控除が使えます。
なお、配偶者の所得状況などにより配偶者控除が受けられない場合は、配偶者の所得に応じて控除が受けられる配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
扶養控除
条件に当てはまる扶養親族がいる場合に受けられる控除になります。扶養しなければならない家族がいるのだから、その分だけ税金負担を軽減しようという制度です。
扶養控除では扶養対象の家族に応じて38~63万円の控除が受けられます。
保険料控除
保険料控除には社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除などがあります。
社会保険料控除とは、国民年金保険料や国民健康保険料、介護保険料など社会保険に支払った額を控除できる制度です。生命保険料控除は生命保険料など個人保険に支払った保険料に関する控除になります。地震保険料控除は地震保険や損害保険の保険料に関する控除です。
小規模企業共済等掛金控除
確定拠出年金や小規模企業共済などへ共済金の支払いをしている場合に使える控除になります。
フリーランスの場合は退職金制度がないため、自分で老後の備えや退職金のことなども考えなければいけません。確定拠出年金や小規模企業共済はフリーランス/個人事業主などの老後の備えや退職金対策としてよく使われています。
医療費控除
医療費控除とは、フリーランス本人や家族にかかった医療費が一定額を超える場合に利用できる控除です。医療費が多くかかった年はその分だけ税金負担を減らそうという制度になります。
医療費控除では、かかった医療費をそのまま控除できるわけではありません。支払った医療費をもとに計算して対象額を算出する仕組みです。
なお、医療費控除には特例(お仲間)であるセルフメディケーション税制などがあります。セルフメディケーション税制はフリーランスの節税にも使える制度です。別記事にまとめましたので、ぜひチェックしてみてください。
寄付金控除
寄付金控除とは特定の組織や団体、自治体、国などに寄付をすることで受けられる控除のことです。公のために寄付をしたのだから、その分だけ税金負担を軽くしようという取り組みになります。
ただ寄付をすれば寄付金控除が受けられるわけではなく、寄付金控除の対象になる団体などに寄付する必要があります。ふるさと納税は寄付金控除のお仲間的な制度です。
寄付金控除の場合は所得控除と税額控除を選べる場合があります。
配当控除
株主が法人から受け取る配当など、配当に関する収益がある場合に受けられる控除です。一定の方法で計算し、算出した額を控除できます。控除のグループとしては税額控除に属します。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンでマイホームを購入した人が受けられる控除です。
マイホームという大きな買い物を融資で購入したわけですから、家計に一定額の返済負担が発生して少なからず家計を圧迫するはずです。そういった住宅ローン返済という事情を考慮して、税金負担を軽減する仕組みが住宅ローン控除になります。
雑損控除
雑損控除は災害や犯罪による損失が発生したときに使える控除です。災害や犯罪で被害があった(マイナスがあった)わけだから、その分だけ税金負担を軽減しようという制度になります。
雑損控除を使う場合は、控除が使えるかどうかに注意が必要です。雑損控除の対象になるのは次のような災害・犯罪になります。
対象になる災害
震災、風水害、冷害、雪害、落雷、火災、火薬類の爆発、害虫や生物による異常災害など
対象になる犯罪
盗難、横領
災害や犯罪といっても、災害や犯罪関係であればすべて雑損控除の対象になるわけではない点に注目してください。特に犯罪は、盗難と横領が対象になります。フリーランスが従業員に財産を横領されたり、盗まれたりした場合は雑損控除の対象になる可能性があるのですが、詐欺や恐喝の被害にあった場合は対象外です。
その他の控除
紹介した控除以外にも、事情や状況によって使える控除があります。
たとえば、働く学生の場合は勤労学生控除などがあります。学生をしながら働いているという事情を考慮して、27万円を控除する制度です。
この他には障害者控除などがあります。障害者に該当する場合は、27~75万円を控除可能です。フリーランスとして仕事をしている障害者の場合は、障害者控除が使える可能性があります。
フリーランスが控除で節税するときの注意点
フリーランスが控除を使って節税するときは注意したいポイントがあります。フリーランスが節税するためにも重要なポイントです。
使える控除は面倒がらずに利用するのが節税のコツ
控除は細かなルールが多いため「面倒だ」と感じるフリーランスは少なくありません。控除の種類も多いため「面倒だからひとつくらい手続き漏れがあっても仕方ないだろう」という、良く言えば大らかなフリーランスもいます。
税額控除にしろ、所得控除にしろ、使うことで税金負担を軽減できる制度です。フリーランスが控除を使うことで手元に残るお金がその分だけ多くなる可能性があるわけですから、節税のためにも面倒がらず、使える控除はしっかり使いましょう。
控除を受けるためには確定申告が必要である
控除は条件に当てはまっていれば自動的に受けられるわけではありません。控除を受けるためには確定申告をしなければいけません。ただ、フリーランスの場合は1年間の収支と税金を報告するため確定申告は必須ですから、控除を使おうとして確定申告を忘れるようなことは、まずないはずです。
フリーランスが忘れがちなのは「使おう」と思っていた控除を確定申告のときに使い忘れてしまうことです。
たとえば医療費控除を使おうと思っていたとします。しかし、フリーランスは仕事の領収書整理などが忙しく、確定申告直前にばたばたして、医療費の領収書や医療費控除のことをすっかり忘れていました。確定申告が終わった後に「そうだ、医療費控除!」と思い出しました。確定申告が必須のフリーランスの場合、いざ確定申告というときに忙しくて使い忘れてしまうことがあります。
控除の使い忘れがないように、控除関係書類や領収書はひとつのところにまとめておくなど工夫してみましょう。控除に必要な書類について調べておくこともポイントです。
自分が使える控除が分からない場合は税理士に相談しておく
自分がどのような控除を利用できるか知りたい場合は税理士に相談してはいかがでしょう。税理士に相談することで意外な控除が使えると分かるかもしれません。
たとえば、雑損控除などは、基礎控除や医療費控除、ふるさと納税などより知名度が高くない控除です。医療費控除など知名度の高い控除だけをチェックしている人の場合、雑損控除の存在を知らず、使えるのに制度の存在そのものを見逃しているケースがあります。税理士に相談することで、意外な見落としに気づくことは少なくありません。
また、自分では使えないと判断した控除が、税理士に相談することで使えることが発覚するケースもあります。控除についても勘違いに気づくこともあります。細かな条件が定められている控除については、税理士に見直ししてもらうことで節税につながるケースがあるはずです。
まとめ
フリーランスの節税に欠かせない控除について説明しました。
控除とは「引くこと」です。税金の控除では利用条件に当てはまっている場合は控除に定められた金額を税額あるいは所得から控除できます。控除により税額や税金計算のもとになる所得が小さくなるため、控除を使うことはフリーランスの節税の鍵になります。
どのような控除が使えるか分からない場合は、今後の節税対策を早めに固めておくためにも、税務署や税理士と話してみるといいでしょう。その上で、確定申告で忘れずに使うことが重要です。