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SES事業を始める人必見!SES事業のキホンのキ

SES事業を始めたい!という時に「そもそもSESと他のシステム開発契約の違いがわからない」だったり「どうやって契約にこぎつけたらいいかわからない」という方もいると思います。

この記事を読めば以下のことが分かるように解説していきます!

この記事で理解できること

・SES契約と他の契約との違い
・SES事業のメリットデメリット
・SES事業で案件成約するための流れ

では早速いきます!

SES事業とは?

SES(System Engineering Service)は、システムやソフトウェアの開発・運用などで行われる委託契約の一種で、クライアントに対しエンジニアの労働提供を行う契約形態のことです。
エンジニアは基本的にクライアント先に常駐(もしくはリモートワーク)し、自身の保有するスキルを活かし技術的なサービスを提供します。

SESについては以下で解説していますので、参考にしてみて下さいね!

SES契約で事業をしていく際には契約の性質や会社間の権利、義務などをきちんと理解しておく必要があります。また、SESだけでなく派遣や請負といった契約形態もあるので、これらの違いを押さえておくことも重要なので解説していきます。

派遣や請負との違い

IT業界におけるシステム開発の契約形態には、大きく分けて2種類あります。

①派遣契約・SES契約

派遣契約とSES契約で共通していることは、技術者の労働を提供するものになります。(クライアントは技術者の労働に対して報酬を支払います)

ただし派遣契約とSES契約で以下の点に違いがあるので、しっかり認識しておいてください。

派遣契約

派遣元会社(雇用主)と派遣先会社(クライアント)が締結する契約のことを言います。派遣元とエンジニアが雇用関係にあり、エンジニアは派遣先にて業務を遂行します。
派遣契約では、派遣先の下で労務管理や指揮命令が行われます。

派遣契約をする際には、派遣元企業が厚生労働省から一般労働者派遣の許可を得る必要があります。その許可を得るための要件として資産が2000万円以上、現預金が1500万円以上といったものがあるので、まずはSES事業で収益を上げていき一般労働者派遣の許可を得るのが順当な流れとなります。

SES契約

派遣先からの指示で動く派遣契約とは異なり、SES契約における指揮命令権は派遣元(雇用主)にあります。派遣契約とは異なり、派遣先会社がエンジニアの労務管理や業務の指揮命令を行うことはできません。
それらはすべてエンジニアの所属会社側が行うことになります。

②請負契約

請負契約とは、契約に定められた期間内に、成果物(システム等)を完成させ納品し、クライアントの検収が完了したら報酬を受け取る、という契約になります。

【注意点】
契約上はSES契約という形をとっているものの、実際は、クライアント企業において業務を指示したり残業をさせたりしている場合には、派遣業務を偽装するものとして「偽装請負」にあたる可能性があります。偽装請負にあたる場合、労働者派遣法や職業安定法などに違反し、是正勧告や罰則の対象となる可能性があるため注意が必要です。

◎対価の在り方
SES・派遣契約:過程に対する報酬
請負:結果に対する報酬

◎指揮命令権について
SES:エンジニアの雇用企業が指示を出す
派遣契約:クライアントが指示を出す
請負:エンジニアの雇用企業が指示を出す

SES事業のメリット、デメリット

SES事業におけるメリット、デメリットを説明します。
会社としてのメリットもそうですが、エンジニア目線でのメリットにも触れていきます。

メリット

事業が安定する

IT関連のプロジェクトは長期で続くものが多く、エンジニアの評価が高ければずっと継続して利益を上げ続けることができます。そういったエンジニアが増えるほど、毎月のキャッシュフロー上の利益が増えていき事業が安定しやすい形態の事業となります。

また、自分自身もSESで現場に出ることによりキャッシュフローは安定し黒字の月が続くほど会社としての信用が増えていきます。

スキルが身に付く

これはエンジニア目線でのメリットですが、プロジェクトによって求められるスキルが異なるので、自分の得意分野を活かしながら、新しいスキルを習得できるチャンスがあります。様々なプロジェクトをこなしていくことで、スキルが磨かれるので、自分の努力次第で着実にエンジニアとしての経験値を上げていくことができます。

社外とのコネクションが多くなる

クライアントのプロジェクトでは様々な企業の人と一緒に仕事をする機会がとても多いです。
そこで出会った人から刺激を受けて技術習得へのモチベーションが上がったり、知り合った縁で新しい仕事をもらえたり、働き方次第では新しい可能性に出会えることもあります。

例えば、SESとしてシステム開発現場に入り込んでマーケティングに困っているというニーズをピックアップできれば、マーケティングのコンサルとしての仕事を会社で請けて利益を上げるということも不可能ではありません。

SES事業を立ち上げてすぐの頃は、キャッシュフローが良くなることに加え、仕事の広がりという観点でも、自身で現場に出て仕事をすることは有益です。

デメリット

自社への帰属意識が希薄になる

エンジニアは基本的にクライアント企業に常駐(もしくはリモートワーク)するため、所属元会社(自社)へは用事がない限りは出社することがありません。
自社との定期的なコミュニケーションがないと「なんでこの会社で働いているんだっけ?」という考えになりがち。そんな時に別の会社からスカウトされた場合に「収入が上がるんだったら転職しよう」という決断になりやすい業界です。

プロジェクトによる環境が変化する

プロジェクトが変わるたびにその現場の労働環境に慣れる必要があります。
自分のやりたい業務や働きやすい環境のクライアントなら良いですが、エンジニア自身が「自分に合わない環境にアサインされた」と感じる環境で働いてもらうケースも出てくることでしょう。そのような時もしっかりフォローできるような体制をとっていくことが大切になります。

待機が発生してしまう可能性がある

クライアントの都合で急きょプロジェクトが終了してしまうことがあります。またエンジニアのスキルアンマッチだったりした時にも契約を切られてしまうこともあります。

この業界では”あるある”です。

そんな時でも経験豊富なエンジニアであればすぐに案件を見つけることができると思います。しかし経験の少ないエンジニアの場合は、なかなか案件が決まらず待機となってしまうことがあります。
そのエンジニアを雇用していれば、自宅待機中も人件費が発生してしまいます。

そのため体力の少ないうちは、ある程度経験を積んだエンジニアを雇用したり、フリーランスのエンジニアを増やしていくという方向性を取るとこのデメリットは回避しやすくなります。

SES契約が成立するまでの流れ

いざSES事業を始めるためにエンジニアを雇用したら、次はそのエンジニアが働く案件の契約を獲っていく必要があります。
みなさんはフリーランスになる時も経験しているとは思いますがエージェントに一任していたという方も多いと思うので、あまり把握できていなかったり、自社のエンジニアの案件の契約は初めてというかたもいるかもしれません。

改めて以下で解説していきますので、ぜひ参考にしてみて下さいね。

エンジニアの営業条件の決定

エンジニアがプロジェクトにアサインされるまでの一連の流れは所属元会社の営業担当者が担当するのが一般的です。

まずはエンジニアを営業する上での単価設定をします

エンジニアが1ヶ月働く分の工数を1人月と言い、1人月分の予算のことを単価(単金)と言います。

単価設定については企業によってある程度の基準や目安があり、基本的にはエンジニアのスキルや経験年数、マネジメント経験などから割り出しますが、実際にはプロジェクトにより変動することも多いです。

また、単価感はスキルにより1年経てば若干変わったり、地域によっても異なるので、実際に営業で動いていき単価感を把握していく必要があります。

営業活動の実施

SES営業には大きく分けて2パターンの営業手法があります。

ひとつは取引先のクライアントから案件情報(プロジェクト)がメール等で送られてきている場合は、そこにエンジニアを提案する方法。

もうひとつは人手を募集している案件がないかクライアントに問い合わせ、エンジニアを売り込む方法。

どちらのパターンもSESでの複数の取引先に並行で営業することがほとんどです。
1社に絞ってしまうと、見送られてしまった場合はまた振り出しに戻るので、営業活動に時間がかかってしまうからです。

SES営業は、クライアントのニーズとエンジニアのスキルをマッチングし、スピード感を持って効率良く提案活動をしていきます。
また、クライアントに対しては常にアンテナを張り、自社の各エンジニアのスキルを把握しておくことが必要です。

クライアントと商談(面談)

エンジニアを提案すると、ニーズがあれば面談を希望する連絡が返ってきます。

クライアントのニーズに対して適切なスキルを持つ人材を提案するほど、面談依頼が来る確率は高まります。

面談ではエンジニアのスキルがプロジェクトにマッチするかどうか、そしてエンジニアがそのプロジェクトを遂行できるかどうかを両社が判断するための話をします。

面談時は営業がエンジニアを引率しますが、エンジニアが上手くスキルアピール出来るようフォローするのも営業の役割です。

面談後にエンジニアと会話し、もし「このプロジェクトには参画しない」という判断をした場合は、速やかにクライアントにお断りの連絡を入れて下さい。

面談後クライアントがオファーの意思を出したら、エンジニアの単価交渉に入ります。

条件の確定

エンジニアに設定した希望単価でクライアント側に受け入れてもらえるか調整します。

面談と条件交渉は営業としての腕の見せどころです。

また、面談後にオファーをもらっても、単価が折り合わずに白紙になってしまうケースもあるので、事前にクライアント側には予算を確認しておいたほうが良いでしょう。エンジニアの単価が会社間で合意してから契約締結に進みます。

また、タイミングによっては契約書や注文書の締結が案件参画後となることも多いので、条件面はエビデンスとしてメールで送ってもらうようにしましょう。

基本契約書の締結

クライアントとの条件の合意後、契約締結へと進むことになります。契約締結においては、基本契約書と個別契約書(注文書)を締結します。

基本契約書とは、継続的な取引の基本的な条項についてまとめた契約書で、契約の範囲や成果物の取り扱い方法、契約解除などについて書かれています。

基本的には発注側(クライアント)に基本契約のひな形があるか確認し、入手出来たら契約書のリーガルチェックします。

内容が問題なければ、2部製本して双方社判を押印して1部ずつ保管します。
※最近だと電子署名の契約書を締結することも増えてきました。クライアント側での決まり等があるので、締結方法はクライアントへ確認しながら進めましょう。

個別契約書(注文書)の締結

基本契約書で取り決めた以外の事柄について定めた契約書の事を個別契約書といいます。
主に案件内容や月額単価、契約期間など個々に具体的な内容についてまとめた契約書です。

個別契約書(注文書)に少なくとも記載してあるべき条件の事項

  • 注文期間
  • 1人月当たりの金額(税抜、税込かを明確に記載)
  • 支払条件(締め日・支払サイト)
  • 精算条件(基準時間・超過控除単価・精算単位)

良好な取引ができるように基本契約書も個別契約書(注文書)もしっかりと内容を確認することが大切です。

参画初日の対応

プロジェクトの参画日初日の待ち合わせ情報などは事前に確認しておきます。
エンジニアの引率として営業担当が行くこともあると思います。初日から待ち合わせに遅刻すると印象が悪くなってしまうので、エンジニアと少し早めに集合場所に着くようにしておきましょう。

もし初日からフルリモートのプロジェクトであれば、クライアントからURLを回収しエンジニアに展開するだけでOKです。

契約が成立した後にするべきこと

クライアントへ請求書を発行

無事、エンジニアの案件が決定し、1カ月間稼働したとするとクライアントへ請求書を発行する必要が出てきます。

その際の請求書の金額のエビデンスとして、エンジニアの勤務表(作業報告書)を回収しクライアントへ請求書と同時に添付してメールにて送付します。
※勤務表は原則として本人から回収しますが、クライアント側から入手する場合もあります。

請求書を作成する際には個別契約書(注文書)の内容を確認し、その内容に合わせて正しく作成しましょう。

もし請求書について原本の郵送も求められる場合は、請求書を印刷してクライアントへ送付するということも必要となります。
面倒ではありますが、郵送する際は送付状をしっかり作成してお送りすることをオススメします。

案件延長確認

エンジニアの発注期間は3~6か月単位などプロジェクトによって異なります。
発注期間の終了日の少なくとも1か月前までにはクライアント先に契約期間の延長を確認します。

その前に必要に応じてエンジニアの状況を確認し、会社としても延長するかどうかを判断しておきましょう。

双方で延長希望の場合、再度個別契約書(注文書)を締結する流れとなります。

エンジニアへの定期フォロー

SES事業をするうえではエンジニアのフォローはとても大切です。

ここが出来ないと、いくら上手くクライアントのニーズと人材をマッチングさせたとしても、継続した運営は出来ないと言っても過言ではありません。

参画後、現場でのエンジニアの悩みや困っていることなどをヒアリングするために、営業担当がエンジニアの常駐先に出向いたり、zoom等で繋げてヒアリングをします。
ヒアリングの際は、クライアントからの評価や要望なども伝えて、フォローアップします。

これをこまめに実施することが重要です。

最初の頃は営業が顔を出してくれたが、段々と放置気味になった、というケースも意外と多く、それが理由でエンジニアのモチベーションが下がり、退職につながってしまうこともあります。

また、ただフォローするだけでなく、そのエンジニアのキャリアパスを考えることも営業の仕事として重要なウェイトを占めるようになっています。

現在はコロナ禍でテレワークが推奨されたことで、テレワーク中は人によっては孤独感を感じていることもあるでしょう。

エンジニアへのフォローの仕方も工夫が必要になってきています。

最後に

業界では慢性的なIT人材不足と言われています。また国の試算によると、今後のIT人材不足は加速していくと見込まれています。

クライアント側としてもSESを活用すれば、雇用せずともエンジニアの労働力が手に入れて人手不足を補うことができます。

そのことから、SESを収益の柱(事業)としている企業は10,000社を超えると言われておりますが、SES企業は今後も増加していくと考えられます。

この市場の流れに乗っていく力になれるよう、私も今後有益な情報を提供していければと思います!

ここでは、SES事業の基本的な内容について説明してきました。
引き続き会社を運営していくステップをまとめていますので、こちらを参考にしていって下さいね!