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フリーランスエンジニアが家賃も光熱費も経費にする方法

フリーランスの方にとって経費の考え方はいつまでも付いて回る問題ですよね。
自宅で作業をしているフリーランスの人は家賃や光熱費をどの程度経費にできるのでしょうか?

ここではその計算に必要な考え方や目安をお伝え致します!

この記事で理解できること

・経費の考え方
・家賃や光熱費の経費の割合の算出目安

家賃や光熱費は経費にできるのか?

原則として仕事で使用した分の家賃や光熱費については、経費に計上できます。

最近はSESの業態でもフルリモートの仕事も増えているので、フリーランスエンジニアとして自宅で仕事をしている方も多くなってきていると思います。そのため自宅が職場と捉えて家賃や高熱費は問題なく経費計上できるでしょう。

しかしクライアントから仕事場所を提供してもらっていたり、自宅ではないところに作業場所を構えている場合は自宅を仕事として使用している時間は少なくなるので経費として計上できる分は少なくなる、もしくは経費計上できないということも考えられます。

また、自宅は仕事もしていないプライベートのスペースや時間ありますので、家賃や光熱費の全額を経費として計上できるわけではありません。

家賃や光熱費の経費計上の考え方について知っておくべき基本的なポイントから順番に説明していきます。

フリーランスエンジニアの経費とは「仕事にかかった支出」

まずは簡単に「経費とは何か」「経費と税金の関係」など基本的なポイントからおさらいしましょう。

経費とは「フリーランスエンジニアが仕事に関して支出したお金」のことです。

たとえばフリーランスエンジニアがクライアントとの話をメモしなければならないため、メモ帳とペンを買いました。メモ帳は100円でペンも100円、計200円の支出です。
メモ帳とペンはすべて仕事のために使いましたから、フリーランスエンジニアの仕事をするための支出といえるでしょう。仕事がなければ支出を要しなかったはずです。

仕事に必要な物の購入代や仕事に関係するサービスの支払いなどが経費に該当します。
経費はフリーランスエンジニアの売上から引くことが可能です。ペンとメモ帳の支出である200円という金額はフリーランスエンジニアの売上からマイナスできるということです。

フリーランスエンジニアが経費をしっかり計上するメリット

記事の冒頭でもお話ししましたが、フリーランスエンジニアが経費を漏れなく計上することによって、その分だけ税金を減らすことが可能です。つまり、経費の計上によるメリットは「節税」になります。

フリーランスエンジニアの経費と税金の試算

経費の計上をしっかりやることによってどれだけ税金の負担を減らせるのか、実際に簡単なシミュレーションをしてみましょう。

例①:売上200万円のケース(試算)

フリーランスエンジニアをはじめて1年目で売上200万円でした。1年目は何かと物入りですから、機器などを購入したら経費が150万円になりました。

売上200万円から経費分150万円を引くと50万円です。この50万円という利益をベースに税金を計算すると、所得税・住民税・国民健康保険料の合計額は約6.8万円ほどになります(青色申告の場合は0円)。

では、仮に仕事道具にかかった50万円の経費計上を忘れて計算したら金額はどうなるでしょう。

売上200万円で経費は100万円ですから、利益は100万円です。この場合の税金や国保の総額は約19万円になります(青色申告の場合は0円)。経費50万円の計上を忘れるだけで10万円以上の金額差が出ていることが分かります。

  • 売上:200万円、経費:150万円(利益:50万円)の場合
    →所得税・住民税・国民健康保険料の合計額は約6.8万円ほど
    ※青色申告の場合は0円
  • 売上:200万円、経費:100万円(利益:100万円)の場合
    →所得税・住民税・国民健康保険料の合計額は約19万円ほど
    ※青色申告の場合は0円

例②:売上400万円のケース(試算)

翌年フリーランスの仕事を軌道に乗せて2倍である400万円を稼いだとします。経費が100万円だと、住民税や所得税、国民健康保険料は約70万円にもなります(青色申告では約51万円)。

経費を漏らさずしっかり計上して300万円だとすれば、利益は100万円です。この場合の税金は約19万円(青色申告の場合は0円)になります。

  • 売上:400万円、経費:100万円(利益:390万円)の場合
    →所得税・住民税・国民健康保険料の合計額は約70万円ほど
    ※青色申告の場合は約51万円
  • 売上:400万円、経費:300万円(利益:100万円)の場合
    →所得税・住民税・国民健康保険料の合計額は約19万円ほど
    ※青色申告の場合は0円

経費の金額だけでこれほど税金に差が出るのです。税金にこれだけ差が出るということは、フリーランスエンジニアの資産にもそれだけ差が生まれるということではないでしょうか。

なお、この試算は控除や専従者給与を含めていないため、実際の税金額とは異なります。あくまで簡易的な資産になります。ただ、経費をしっかり計上するかどうかでフリーランスの節税・資産には大きな差が生まれる可能性があるため、注意したいポイントになります。

フリーランスエンジニアが経費をして計上できる支出は?

フリーランスエンジニアが経費として計上できる支出はいろいろあります。仕事に関係のある支出であれば基本的に経費に計上できる可能性が高いと考えて差し支えありません。

たとえばエンジニアの仕事の専門書を購入しました。仕事のための本ですから購入費は基本的に経費にできます。

では、取引先へ打ち合わせに向かう交通費はどうでしょう。交通費も仕事のための費用ですから経費に計上可能です。

フリーランスエンジニアが経費に計上できるものには以下のような費用があります。

  • 機器代
  • 文具代
  • 交通費
  • ガソリン代
  • 雑誌・書籍・新聞代
  • 宣伝や広告の費用
  • 仕事に使うネットサービスなどの費用
  • 打ち合わせ時のお茶代
  • 調査費用
  • ネットの保守費用
  • サーバー費用
  • 機器のレンタル費用
  • システム費用
  • 仕事のためにセミナー費用
  • 切手代

などなど。

上記の他にも仕事に関する支出であれば経費として認められる可能性があります。

フリーランスが自宅で仕事をしている場合は自宅の家賃や光熱費なども経費として計上可能です。

しかし、記事の最初の方でお話したように、自宅として使っている以上、家賃や光熱費を全額経費にすることはできません。

では「どのくらいの金額(割合)なら認められるのか?」が問題になります。

家賃や光熱費はどのくらい経費になるか

フリーランスエンジニアが自宅を職場にしている場合、家賃や光熱費の経費計上には「家事按分」という考え方が使われます。

フリーランスの経費の「家事按分」とは?

家事按分とは「生活に使っている分(仕事と関係ない分。家事分)と仕事に使っている分を分けよう(按分しよう)」という考え方です。

自宅の家賃や光熱費のうち、仕事に使っている分については経費にできます。しかし、個人的な生活に使っている分については経費にできません。家事分(個人的な生活分)は仕事と関係ない部分だからです。

フリーランスエンジニアが家賃や光熱費を経費にするためには、家賃額を仕事と家事分に仕分けし、光熱費についても仕事と家事分に仕分けしなければいけません。

しかし、ここでさらなる問題です。

自宅に電気料金や家賃の請求がきたとして、請求分にご丁寧に「〇万円のうち〇円が仕事分です」などと記載されているでしょうか。

記載されているわけがないですよね。

具体的にどのくらい仕事で使っているか、細かな金額まで把握しているフリーランスはまずいないはずです。自宅のワンルームアパートを仕事と生活に使っているとしても、仕事と生活が密着している以上、正確に「部屋面積の5割が仕事」と計算することも難しいのではないでしょうか。これが家事按分の難しいところです。

光熱費や家賃を家事按分で計算する場合は「家賃のうち仕事に使っている分の金額は大体〇割」という感じで計算するしかないのが実情です。

家賃は家事按分でどのくらい経費にできる?

家賃を家事按分でどのくらい経費にできるかは仕事と私生活との按分によります。

自宅のうち9割仕事で使っている場合は9割ですし、5割ならば5割の家賃を経費にできます。自宅のうち仕事に使っている割合の分の家賃を経費として計上するのが基本です。

たとえば家賃が10万円で、自宅の9割を仕事で使っているとします。この場合は仕事9割なので9万円を経費として計上できるわけです。自宅のうち5割を仕事で使っているなら5万円が経費になります。

ただ、あまりに按分の割合が多いと「本当に仕事で使っているのか」「水増ししているのではないか」などの疑問が残ります。

家の大きさにもよりますが、10部屋ある家の9部屋を仕事に使っていて、残り1部屋を仕事に使っているのであれば、8割や9割の按分でも税務署は納得するかもしれません。

しかし、8畳のワンルームアパートだったらどうでしょう。8畳のワンルームアパートのうち9割を仕事に使っていると主張しても「寝る場所が1畳以下ではないか」「1割で生活をするのはさすがに無理があるだろう」と疑われるのではないでしょうか。さすがに不自然です。

一般的に家賃の3~4割ほどが経費の目安といわれます。自宅の家賃が10万円であれば、3~4万円が経費の目安ということです。

大前提ですが、税務調査が来た時に税務署が納得するような説明をできるかどうかを念頭に置いて下さい。もし不安な場合は事前に税理士や税務署に確認を取っておきましょう。

光熱費は家事按分でどのくらい経費にできる?

水道料、電気料、ガス料金などの費用も経費に計上できる可能性があります。自宅と職場が一体になっている以上、光熱費のいくらかは仕事で使っている計算になります。光熱費についても家事按分により経費に計上可能です。

しかしすでにお話ししたように、家事按分の割合が不自然だと「一か所で生活と仕事をしているのに光熱費の9割が仕事というのは不自然ではないか」と物言いがつく結果になります。光熱費についても仕事で使っている分を按分(分けて)経費として計上しなければいけません。

光熱費は電気代や水道代、ガス代などでそれぞれ家事按分の考え方が違ってきます。

電気代の家事按分の考え方

電気代は基本的に「自宅でどのくらい仕事をしたか」によって計算します。

たとえば1日8時間フリーランスの仕事をしているのであれば、8時間の機器使用料や灯りの使用料などを電気代として経費に計上することが考えられます。

基本的に「使った時間・使った分」が経費になるわけです。

水道代の家事按分の考え方

水道料の経費については、フリーランスエンジニアはやや厳しめに考える必要があります。それと言うのも、自宅でフリーランスエンジニアとして働いていて、水道はさほど使わないからです。

トイレや仕事中のお茶、仕事上の来客のお茶くらいではないでしょうか。資料を捲って手がぱさぱさしたら手洗いもするかもしれません。そのくらいしか水道は使わないということです。

フリーランスエンジニアの仕事は水道をほとんど使いませんから、「仕事で使った分」として水道料を考えると、数%程度かもしれません。頻繁に来客があるケースで20%行くかどうかではないでしょうか。

フリーランスエンジニアは水道を仕事にあまり使わないからこそ、電気や家賃ほど仕事に使った割合は多くならないはずです。家事按分をよく考え、経費に計上する必要があります。

ガス代の家事按分の考え方

ガス代も水道代と同じです。フリーランスエンジニアをしていてガスはほぼ使わないのではないでしょうか。

来客や仕事中のお茶くらいではないでしょうか。ガス代の家事按分をしても、フリーランスエンジニアの仕事分の割合はかなり小さくなるはずです。フリーランスエンジニアの仕事経費としてガス代に多くの割合を振り分けると不自然感があるかもしれません。ガス代の家事按分についてもよく考える必要があります。

なお、自宅で仕事をしていても、仕事内容や仕事時間などによっては、水道代やガス代が経費として認められないケースもあります。経費として認められるかどうか不安な場合は税理士にあらかじめ相談しておくといいでしょう。

家賃や光熱費の他に家事按分できる経費はあるの?

家賃や光熱費の他にも家事按分できる費用があります。

たとえば自宅で使っているインターネットの支払い。フリーランスエンジニアならインターネットは仕事に必須でしょうから、自宅のネット代も家事按分により費用として計上できる可能性が高くなっています。

この他にもガソリン代や駐車場代などが経費として考えられます。たとえば、自家用車を打ち合わせのときの足に使っていたらどうでしょう。自家用車は私生活でも使いますが、仕事でも使っていることになります。

また、その自動車を動かすときに使うのはガソリンです。ガソリン代も私生活と仕事で家事按分できる可能性があります。そうすると「車を止めている駐車場も仕事分として一部を経費に計上できるのではないか?」となるはずです。

フリーランスとして自宅で仕事をしていると、仕事と生活が密着している状態です。少しでも仕事に使っているのであれば「仕事分はしっかり経費に入れよう」という視点が重要ではないでしょうか。

おわりに

フリーランスエンジニアが自宅で仕事をしている場合は「自宅=職場」になります。自宅が職場だからこそ、自宅の家賃なども経費にできるわけです。

ただ、全額経費にできるわけではなく、あくまで仕事で使う分に限られます。

経費については税務署から「本当にこの割合で合っていますか?」と尋ねられたときに、根拠をしっかり説明できるようにしておきましょう。

経費について分からなければ税理士に確認しておくこともポイントです。確定申告も忘れないように注意してください。