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還付申告とは?できるケースや確定申告との違い、手続きなど

税金の手続きに「還付申告」という手続きがあります。

新米フリーランスやこれからフリーランスとして仕事をしようと思っている人の中には「確定申告以外にも申告手続きをしなければならないの?」「還付申告と確定申告は何が違うの?」「確定申告は聞いたことがあるが、還付申告は聞いたことがない」という人もいらっしゃるのではないでしょうか。

還付申告とはどのような手続きで、フリーランスは毎年しなければならないのでしょうか。

フリーランスとして仕事をするうえで知っておきたい税金手続きの基礎を解説します。申告手続きで迷ったときの手引きとして役立ててください。

この記事で理解できること

  • 還付申告とは
  • 還付申告と確定申告など他手続きの違い
  • 還付申告できるケース
  • 還付申告の手続き

還付申告とは

還付申告とは「払い過ぎた税金を返還してもらう申告手続き」です。

還付申告がよく使われるのは、給与所得者が所得税を払い過ぎていたケースになります。会社から給与をもらっているサラリーマンは、源泉徴収や年末調整などを会社の方で行うため、確定申告は必須ではありません。しかし、医療費控除などが使える場合、税金を払い過ぎているケースがあるのです。

たとえば医療費控除が使える場合に、医療費控除を使っていなかったらどうでしょう。その分だけ税金を多く払ってしまった計算になります。控除を使い忘れなどで税金を多く払ってしまった場合は、納め過ぎた分を「返還してください」と申し出ることが可能です。

払い過ぎた税金を返還してもらうための手続きを還付申告といいます。

還付申告と確定申告の違い

還付申告は「申告」という言葉がつくことと、税金手続きであることから、確定申告と混同されることや勘違いされることがあります。名前は似ていますしどちらも税金の手続きですが、還付申告と確定申告は違った手続きです。

まず確定申告ですが、こちらはフリーランスや個人事業主、副業をして一定の収入がある人などが、一年間の収支・税金額を税務署に報告する手続きになります。税務署は確定申告をもとに課税を行うわけです。課税のベースになる手続きが確定申告だといえるでしょう。税金を計算して確定させるから確定申告 こんなふうに解釈すると覚えやすいかもしれません。

対して還付申告は、払い過ぎた税金を返してもらうための手続きです。税金の還付を受けるから還付申告 です。このように確定申告と還付申告では手続きの内容が違っています。

また、還付申告と確定申告では手続きできる期間も違っています。

確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日です。前年の1月1日~12月31日までの収支を翌年の2月15日から3月15日までの間に申告することになっています。還付申告には確定申告のような期間は定められておらず、5年間手続き可能です。

還付申告と年末調整との違い

年末調整も税金に関する手続きです。還付申告と年末調整、どちらも「税金の手続きだ」と理解していても、内容はよく分からないこともあるかもしれません。還付申告と年末調整も違った手続きなので、税金手続きをスムーズに行うためにも区別をつけて覚えておきましょう。

還付申告はすでに説明した通りです。払い過ぎた税金を返してもらうための手続きが還付申告になります。対して年末調整は、会社が行う税金調整の手続きです。社員が行うのではなく、会社側が手続きします。

会社員は給与から税金を天引きされます。天引きした税金は会社が代わって納め、手続きなどを行うという流れです。ただ、会社が天引きや手続きをしていても、会社側が確認する控除や社会保険料などにより、本来の税金とずれが生じることが少なくありません。会社はその年の12月頃になると社員に税金計算に必要な書類の提出を求め、過不足を計算する(調整を行う)というわけです。これが年末調整です。

年末調整の結果、過不足があれば返還あるいは徴収が行われます。この過不足の返還・調整についても会社側が手続きして何らかのかたちで返還や徴収を行うのが基本です。年末調整はあくまで会社側が主体の手続きだということですね。

還付申告は納税者本人が手続きします。返還についても会社を通すことはなく、税務署から直接還付されるという流れです。また、還付申告は払い過ぎた税金を返してもらう手続きであり、過不足調整のための手続きではありません。

年末調整は会社が主体で過不足を調整し返還・徴収をする手続きである。還付申告は過不足ではなく「過」の場合の手続きで、納税者が行う手続きである。同じ税金に関する手続きでも、このように明確な違いがあります。

還付申告できるケースとは?

還付申告はすべての人が対象になる手続きではありません。会社員やフリーランスの中で「税金を納め過ぎた人」が対象になります。手続きをする前提として、使える控除を使っていなかったなどの理由により税金を納め過ぎていなければならないのです。適正な税金を納めている人は手続きの対象外になります。還付する税金がない人が還付申告をしても意味がないからです(返すための手続きなので・・・)

具体的には次のようなケースで 税金を納め過ぎており返してもらえる場合 に還付申告が可能です。

  • 医療費控除や雑損控除、寄付金控除が使えるが使っていなかった
  • 特定の支出やローン返済などがあり控除を適用できた
  • 家の改修や新築などで特例や控除などを受けられた
  • 年度の途中で退職して年末調整を受けられず税金を納め過ぎていた

など

このように、控除の使い忘れなどで、税金を余計に納めてしまったケースが主な還付申告の対象です。

たとえば、ある会社員が「これから独立してフリーランスとして仕事をする」と年度の途中で仕事を退職して独立の準備をはじめたとします。年度の途中で退職すると年末調整が受けられません。税金を納め過ぎている可能性があります。このようなケースでは、税金を納め過ぎている場合は還付申告で税金を返してもらえるわけです。

以上はあくまで一例なので、これ以外にもいろいろなケースが考えられます。所得税を納め過ぎていれば、基本的に還付申告の対象になります。

還付申告ができないケースとは?

次のようなケースでは還付申告により納め過ぎた税金の還付を受けることはできません。

  • 源泉分離課税の預貯金の利子
  • 源泉分離課税の対象になっている抵当証券や金融類似商品の収益
  • 源泉分離課税になっている割引債の償還差益
  • 源泉分離課税の対象になっている一時払養老保険の差益

一時払養老保険の差益については、保険期間が5年以下のものと、保険期間などが5年超で5年以内に解約されたものが還付申告できないケースになります。

還付申告できるかどうかで迷ったら、税理士に確認しておくといいでしょう。その方が、今後似たような事態に直面したときに対処しやすくなるはずです。

フリーランスは還付申告が必要?

フリーランスは会社が税金の手続きをしてくれないため、確定申告を毎年しなければいけません。そのため、フリーランスは確定申告の他に還付申告もしなければならないのかが問題になります。

たとえば、あるフリーランスが確定申告のために収支を計算して税金額や経費などを記載した確定申告書類を税務署に提出したとします。確定申告書類を見れば、そのフリーランスが本来の税額より税金を納め過ぎているか一目瞭然です。

フリーランスの場合は会社に属していないため、会社が年末調整や源泉徴収をしてくれることはありません。しかしながら、仕事によっては取引先の会社が源泉徴収をするケースがあります。源泉徴収されているということは、取引先の会社がその仕事の報酬についての税金を計算し天引きしたわけです。

フリーランスが確定申告のために控除などを含めて計算した結果、取引先の源泉徴収により税金を払い過ぎていることが分かりました。適正な税金額より多く納めたわけですから、還付申告の対象になるはずです。

しかし、考えてみてください。フリーランスは確定申告をしています。確定申告の書類を見れば還付が発生することは一目瞭然です。このようなケースでフリーランス/個人事業主などは、確定申告の他に還付申告をしなければならないのでしょうか。

結論から言うと、確定申告の他に還付申告を別途行う必要はありません確定申告をすれば、取引先の源泉徴収や予定納税などで多く納め過ぎている分は自動的に還付されます確定申告が還付申告を兼ねていると考えれば分かりやすいはずです。

確定申告が必須のフリーランスや個人事業主で還付が発生する場合は、確定申告で計算され一目瞭然になるため、確定申告のみでOKです。

還付申告は確定申告が本来不要なサラリーマンなどが対象になるケースの多い手続きになります。

確定申告のミスに気づいたときは更生の請求

過去の確定申告の内容に誤りを発見した場合はどうすればよいのかが問題です。

フリーランスの場合は確定申告をすれば還付申告を別途行う必要はありません。そのため「後から確定申告(兼還付申告)のミスに気づいたらどうすればいいのだろう」という問題が発生します。フリーランスは確定申告をすれば還付申告を別途する必要がないからこそ問題ですよね。

過去に行った確定申告で控除を使っていなかったなどのミスがあれば、更生の請求という手続きが使える可能性があります。更生の請求とは、納める税金が多い場合や還付される税金が少ない場合に使える手続きです。

なお、納める税金が少ない場合や還付が多すぎる場合は修正申告の対象になる可能性があります。

還付申告の手続き

還付申告の手続きは、必要書類に記載して税務署に提出するだけです。還付申告の手続きに使う書類は確定申告で使う書類と同じです。確定申告書に記入して提出すれば問題ありません。

すでにお話ししたように、フリーランスの場合は還付申告を別途する必要はなく、確定申告をすれば自動的に納め過ぎた税金分を還付してもらえます。手続きについても、確定申告の手続き=還付申告手続き と考えて差し支えありません。

還付が発生する際に手続き面で分からないことがあれば、税務署にきいておくとスムーズです。

納め過ぎた税金が還付されるのはいつ頃か

還付申告の手続き、あるいは確定申告で税金を納め過ぎていることが分かった場合、どのくらいの期間で税金が還付されるのでしょうか。税金を多く納めた側としてはやはり「いつ返してくれるの?」は気になるポイントです。手続きをしたらすぐその場で還付してくれるのでしょうか。

還付申告・確定申告をしたからといって、すぐその場で税金の払い戻しがあるわけではありません。税金の払い戻しは手続きから1カ月~1カ月半で行われます。還付されるまである程度の時間がかかるため、還付されるまで気長に待つ必要があります。

確定申告などで税金を納め過ぎていることが分かる還付分がある場合は、基本的に還付金額などがハガキで通知されます。

税金の還付はどのように行われるのか

納め過ぎた税金の還付はふたつの方法で行われます。都合の良い方を選ぶことが可能ですが、直接足を運ばずに済む口座振替の方がおすすめです。国税庁もホームページで口座振替をおすすめしています。

  • 口座振替で税金の還付を受ける
  • ゆうちょの窓口で受け取る

なお、口座振替の際は、指定口座に注意が必要です。税金の還付に関しては一部のネットバンクでは受けられない可能性があります。普段ネットバンクを活用しているフリーランスは、還付を受ける際の口座に指定できるかネットバンクに確認しておくことをおすすめします。

フリーランスの税金還付で注意したいポイント

フリーランスが税金の還付を受けるときに注意したいポイントはふたつです。

ひとつは、すでにお話ししたように、フリーランスはあらためて還付申告をする必要はないという点です。確定申告をすれば納め過ぎた所得税は返ってきますので、基本は確定申告をすれば問題ありません。

還付の時期についてですが、フリーランスによって違っています。これは、手続きをする時期がフリーランスによって違っているからです。

税金の還付には1カ月から1カ月半かかります。1カ月から1カ月半というのは、手続きをしてからという意味です。

フリーランスAが2月に確定申告をし、フリーランスBは3月の期限ぎりぎりに確定申告をしました。AはAの手続きから1カ月から1カ月半ほどで還付されます。BはBの手続きから1カ月から1カ月半ほどで還付されます。

このように、いつ手続きをしたかによって還付時期にずれが生じますので注意してください。早めに税金の還付を受けたいなら、早めの手続きをおすすめします。

まとめ

還付申告とは税金を返してもらう手続きです。税金を多く納め過ぎたときに使われる手続きになります。

税金手続きである以上、税金関係を自分で行うフリーランスと無関係ではありません。

しかしフリーランスは基本的に確定申告により還付を受けられるため、確定申告=還付申告 のようなかたちになります。特に必須というわけではありません。

ただ、手続きの名称や中身を覚えておいて損はありません。他の手続きと混同せず、税金の手続きを使い分けましょう。