ここでは節税だけではなく脱税や租税回避等のことにも触れて違いや具体例をまとめました。これを参考に正しく節税していくことを心掛けていきましょう!
フリーランスは税金の手続きも基本的に自分でしなければいけません。もちろん、年間の収支と税額の申告(確定申告)も自分です。だからこそ、税金関係の手続きで「やってはいけないこと」も自分で意識して、やらないように注意する必要があります。
フリーランスが仕事を続けるうえでやってはいけない税金関係のことは以下の3つです。
- 脱税
- 租税回避
- 無申告
どれも何となく「やったらダメ」という意識はあるのではないでしょうか。実際、脱税や租税回避、無申告などをやったら凄くまずいです。場合によってはペナルティを受けてしまいます。
フリーランスは節税できればその分だけ手元に多くの収入が残りますから、仕事を続けるうえで節税は重要です。ただ、節税は租税回避や無申告、脱税と紙一重なところがあります。紙一重だからこそ、フリーランスは節税と脱税、租税回避、無申告の違いについて理解しておくことが重要です。節税しようとしてうっかり脱税や租税回避をしてしまい、税務署からお叱りを受ける可能性があるからです。
フリーランスが正しく節税するための知識として、節税・脱税・租税回避・無申告の違いについて説明します。
節税とは?
節税とは「ルールで許されている制度を使って税金を節約すること」です。
フリーランスは売上そのものが懐に入るわけではありません。売上の中から税金を払わなければならないのです。その際に節税しているかどうかで手元に残るお金がかなり変わってきます。フリーランスが収入を増やすうえで鍵になるのが「節税」です。
ただ、節税はルールに則っておこなわなければいけません。手元にお金を残したいからといって、税金を払わないわけにはいきませんよね。税金額を少なくするために、ルール違反をしてはいけないのです。
世の中には節税に適した制度がありますので、自分が使える制度や許されている方法を使って税金を節約することが節税になります。
節税の具体例
では、具体的にどのようなケースが節税にあたるのでしょう。
フリーランスの節税の具体例としては「控除を使うこと」「経費をしっかり計上すること」が挙げられます。
控除とは医療費控除や寄付金控除などで、税金の計算に使える金額や税額そのものを一定額マイナス(引ける)という制度です。たとえば医療費控除の場合、その年にフリーランス自身や家族の医療費が多くかかった医療費を控除できる制度になっています。
フリーランスが使える控除を探して利用すればその分だけ税金の額が減りますので、節税になるというわけです。各種の控除は国が定めている「使ってもいい節税方法」になります。控除の利用はフリーランスの節税の代表的な方法のひとつです。
もうひとつの節税方法に「フリーランスの経費を計上する」という方法があります。
フリーランスは仕事に関する支出を経費として計上可能です。売上から経費を引けばその分だけ税金計算のもとになる金額は小さくなりますよね。経費を多く計上すればするほど算出される税金額は小さくなるわけです。フリーランスが節税するためには、経費の計上忘れをしないことが重要になります。
税金の申告の際に経費を計上できるという点も、ルールとして認められています。これもフリーランスの節税の具体例と言えるでしょう。
脱税とは?
脱税とは「意図的かつ悪質な税金逃れのこと」です。
法律には脱税について詳細な定義は書かれていません。意図して「税金逃れをしてやろう」と実際に税金の支払いを免れ、それが悪質だと判断されれば脱税になります。
あるフリーランスが所得を隠した疑いで当局から調査されてしまいました。所得を隠した場合、税金の計算に使う金額が少なくなっているわけです。本来納めなければならない税金から逃れたと言えるでしょう。
ただ、脱税は「意図的」であり「悪質」なケースなので、この所得隠しが脱税だと判断されるかどうかは、さらに詳細な状況を追ってみないと分かりません。
具体例で見てみましょう。
脱税の具体例
たとえばAさんは常々「フリーランスの税金は高いよな」と思っていました。控除などの節税方法を使って納税がなくなるわけではありません。納税をなくすためには、それこそ所得自体を消してしまうくらいしか方法がないわけです。
Aさんはフリーランスの税金は高いから、所得自体を隠して「何も儲からなかった」ことにしました。実際は、Aさんには儲けがありましたが、税金を払いたくないので隠したわけです。それも、Aさんの儲けは多額だったので、かなりの所得額を隠していたことになります。
やがてAさんの出入金記録から足がつきました。Aさんを調査すると、税金を払いたくないという気持ち(意図)で所得隠しをしていたことが分かりました。しかも、Aさんが隠したのは高額です。このようなケースは悪質かつ意図的と考えられ、脱税だと判断される可能性があります。真面目に税金を払っているフリーランスからしてみれば「ズルい」という感じですよね。
では、今度はBさんのケースで考えてみましょう。
Bさんはフリーランスの売上を計算したときに、うっかり一部の売上を見逃してしまいました。Bさんは所得隠しをするような意図はありませんでした。Aさんと結論は同じでも、Bさんにはうっかりミス(故意なし)という事情がありません。
AさんとBさんを一緒に考えることはできないのではないでしょうか。
所得隠しなどの中でも、故意であり悪質度の高いケースは脱税だと判断される可能性があります。
フリーランスの売上の隠ぺいや二重帳簿、架空の経費計上、仕入れの水増しなども脱税だと判断される可能性があります。
脱税のペナルティ
脱税をしたフリーランスにはペナルティがあります。ペナルティはふたつです。ひとつは刑事罰で、もうひとつは税金の支払い額が上乗せされるというペナルティになります。
脱税だと判断されたフリーランスは懲役や罰金、あるいは併科という刑事罰のペナルティがあります。
本来払わなければならない税金を払わなかったこと、脱税というルール違反をしたことから、延滞税や加算税の対象にもなるのです。延滞税や加算税が追加されることにより、払わなければならない税金が増えることになります。
租税回避とは?
租税回避とは「ルールの抜け穴を利用して税金を回避すること」です。「節税と似ているのではないか」と思うかもしれません。少し違います。節税は控除などルールで定められた方法を使って税金の負担を軽くすることですが、租税回避の場合はルールの穴を突くと説明した方が分かりやすいかもしれません。
悪賢くルールの穴を突く方法や、ルールが想定していない方法で税金逃れをすることが租税回避です。
租税回避の具体例
租税回避の具体例としては、たびたびニュースで取り上げられる「タックスヘイブン」があります。タックスヘイブンとは税金が安い国に子会社を作り課税を逃れる行為です。
脱税の場合は不法に税金を逃れることです。しかしタックスヘイブンなどの租税回避行為は法律で「駄目です」とは定められていません。本来は特に問題のない行為なのです。
そもそも、海外と取引してはいけない、子会社を作ってはいけないというルールはありません。ですが、税金を回避する目的で海外との取引や子会社の設立をすることは、違法ではないにしろ一種のズルとも考えられます。
租税回避のペナルティ
租税回避をしたからといって特に追加で課税されるわけではありません。なぜなら、課税して良いというルールがないからです。
法律に定められていないのに課税されるのは日本の税金の原則(租税法律主義)に反します。租税回避は違法に税金を免れるのではなく、ルールの抜け穴を利用して税金負担を軽減するわけですから、それ自体は特にルール違反というわけではないのです。
ただし、抜け穴を使ったズルと判断される可能性があるわけですから、裁判になるなどトラブル化することも考えられます。実際に、過去に租税回避により裁判になっているケースなどがあります。
無申告とは?
無申告とは「税金の申告をしないこと」です。
フリーランスは確定申告で前年1月1日から12月31日の収支・税金を申告しなければいけません。それなのに、申告忘れや税金を免れる意図で申告自体をしていない場合は無申告に該当します。
無申告の具体例
フリーランスをはじめて1年目。確定申告をしなければならないことは知っていたのですが、確定申告をすると税金を納めなければならないと思い、仕事をしていないと周囲に嘘をついて申告していませんでした。
後からフリーランスの取引先に税務調査が入り、帳簿や書類から取引を知られた結果、無申告だったことがバレてしまいました。
無申告のペナルティ
無申告では納める税金が増えます。無申告はペナルティとして延滞税や加算税の対象になってしまうため、フリーランスが本来払う税金額より納める額が増える結果になるのです。
申告忘れの場合は、遅れて申告することもできます。気づいた時点で申告すればペナルティを最小限に抑えることが可能です。
フリーランスが税金負担をおさえるなら「節税」が重要
上手くやればフリーランスの仕事の収入を誤魔化せると思うかもしれません。
実際はそう甘くはありません。取引先への税務調査でバレることもあれば、フリーランスの仕事の収支からバレることもあります。また、フリーランスにも税務調査が入ることもあるため、税務調査から無申告や脱税、所得隠しなどがバレてしまうこともあるのです。
フリーランスが税金を逃れようとして脱税や所得隠し、無申告などに走っても、わりと簡単にバレてしまいます。税務署は税金のプロですし、よくチェックしていますから、税金のプロでもないフリーランスが騙せるとは思わない方がいいでしょう。
フリーランスの納める税金が少なくなれば、その分だけ手元に多くのお金が残ります。しかし、節税したいからといって脱税や無申告などをしてはいけません。すでにお話ししたように、脱税や無申告の場合は納める税金が増えるというペナルティがあるのです。脱税の場合は刑事罰のリスクもあります。
フリーランスが税金の負担を減らすなら脱税や無申告ではなく、賢く節税することが重要です。
フリーランスの主な節税方法は?
フリーランスが節税するためにはルール違反をせずにおこなう必要があります。フリーランスの使える代表的な節税方法について、あらためて確認しておきましょう。
フリーランスの経費をしっかり計上する
フリーランスの仕事をする上に支払った経費は売上から引けます。売上から経費を引かないと、その分だけ税金の計算に使う金額が大きくなってしまうのです。
フリーランスが税金をおさえるためには、経費として引ける支払いをしっかり引くことが重要です。経費の水増しはNGですが、発生した経費を漏れなく引くことは立派な節税になります。
フリーランスの経費については別記事で説明しました。節税のためにも別記事も参考にしてください。
フリーランスが使える控除を使う
フリーランスが使える節税方法に控除があります。控除とは、税金や所得などから一定額を引けるという制度です。税金計算のベースになる金額や税金そのものから一定額を引くことにより納める税金額も小さくなります。
控除は国の定めた制度なので、使ってもまったく問題ありません。控除は節税の基本的な方法なので、使える控除はどんどん使ってしまいましょう。
控除にはいろいろな種類があります。それぞれの控除に利用条件が定められていますので、自分が使えそうな控除を探してみましょう。
ふるさと納税やセルフメディケーション税制などは別記事で解説しています。節税の参考になりますので、ぜひチェックしてみてください。
使える控除が分からないときは、税理士に教えてもらってもOKです。
無申告や脱税をしない!
無申告や脱税をしないことも節税です。
無申告や脱税は基本的にバレます。素人フリーランスが税務署を誤魔化せるとは思わない方がいいでしょう。どうせバレると考えて、最初から無申告や脱税には手を染めないことが重要です。
無申告や脱税をするとペナルティがあります。不法に税金逃れをするとけっきょく払う額が多くなるわけです。それなら、最初からしっかり申告してペナルティのない税金額を払った方がマシではないでしょうか。
まとめ
フリーランスは手取りを増やすためにも節税すべきです。しかし、脱税や無申告などはするべきではありません。脱税や無申告にはペナルティもあるため、けっきょく自分が損する結果になります。租税回避についてもトラブルのもとなので、避けた方が無難でしょう。
フリーランスが使える控除や経費計上など、正しい節税方法を使ってください。